来年以降も険しい道のり? 米国野球殿堂入り

[ 2021年1月28日 09:00 ]

レッドソックスで通算216勝を挙げたカート・シリング氏(AP)
Photo By AP

 ティム・ミード氏の張りのある声は、寂しげなトーンも帯びていた。エンゼルスで40年間の広報業務に携わり、その実直な人柄で松井秀喜、大谷翔平ら日本選手も手厚くサポートしてきた同氏は、19年夏に米国野球殿堂博物館の館長に就任。26日、今年の記者投票の結果、8年ぶりに殿堂入りの該当者がいなかったと発表した。

 今回は、選出なしの可能性が事前に予想されていた。71・1%で最多得票率(75%以上で選出)だった通算216勝のカート・シリング氏は、度重なる差別的発言や熱心なドナルド・トランプ氏の支持者であることなどにより、評判を落とした。2位の61・8%で歴代最多762本塁打のバリー・ボンズ氏(元ジャイアンツ)、3位の61・6%で通算354勝のロジャー・クレメンス氏(元レッドソックス)も、現役時代の薬物疑惑がぬぐえないままでいる。

 新たにダーティーなイメージが付いてしまったのが、遊撃手として歴代最多の1734併殺をマークした名手オマー・ビスケル氏(元インディアンス)だ。シュアな打撃では2877安打。18年に38%、19年に42・8%、20年に52・6%と順調に票を伸ばしてきたが、今年は49・1%にダウンした。夫人へのDV疑惑が報じられたためだ。

 ミード氏は記者投票の評価対象は「選手としての能力」に加え、「品格、人間性、スポーツマンシップ」も必要だと強調した。差別問題やコンプライアンスに関して世の中の見方が厳しくなっている現状で、一度ついたイメージは払しょくされにくい。今年の上位3人は、来年が資格最終年(シリング氏は候補からの除外を要請)となる。

 22年は薬物規定違反で162試合の出場停止処分を受けた通算696本塁打のアレックス・ロドリゲス氏(元ヤンキース)、同じく薬物疑惑が取り沙汰されたことがある通算541本塁打のデービッド・オルティス氏(元レッドソックス)が、新たな候補となる。また、23年に候補入りする通算435本塁打、312盗塁のカルロス・ベルトラン氏(元メッツ)は、17年アストロズ時代にサイン盗みの中心的存在だったことで、19年オフに就任したメッツ監督の座を、指揮を執る前に追われた。この3人にとっても、殿堂入りへの道のりは平坦ではなさそうだ。(記者コラム・大林 幹雄)

続きを表示

2021年1月28日のニュース