【運命を待つドラフト候補】履正社・田上 公式戦未登板の150キロ右腕 ガン治療中の母のためにもプロへ

[ 2020年10月23日 05:30 ]

7月19日の練習試合・智弁和歌山戦で3番手として登板した履正社・田上(履正社茨木グラウンド)
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 プロ野球ドラフト会議は26日に開催される。新型コロナウイルス感染拡大の影響でアピール機会が減少する中、運命の時を待つ候補選手を紹介する。今回は、2018年の大阪桐蔭以来、同一校から4人指名を待つ履正社・田上奏大外野手(17)。

 人生の岐路を迎え、悩みに悩んで出した答えは、可能性に懸ける選択だった。しかも野手ではなく投手としての挑戦。今夏の練習試合で自己最速となる151キロを計測した田上は、固い決意を言葉ににじませた。

 「どの球団でも絶対にプロに行きたい。ちょっとでもチャンスがあるんだったら、それに懸けたいと思いました」

 履正社では1年秋からベンチ入りし昨秋から中堅レギュラーとして活躍。大学での投手挑戦を見据え、コロナ禍によるチームの活動自粛期間から本格的な投球練習を始めた。小、中時代に投手経験があるとはいえ、140キロ台前半がやっとだった。

 だが自宅裏の公園でホームベースの両端に棒を立ててストライクゾーンをつくり毎日投げることで球速上昇。自粛明けのシート打撃では上位候補の小深田のバットをへし折った。公式戦での登板はかなわなかったが150キロ台に達したことでプロを意識したのは事実。練習試合を視察した中日の中田宗男アマスカウト・アドバイザーも「150キロを出せる高校生はそうはいない」と驚く。

 最終的にプロ志望に切り替えたのには理由がある。兄・楓大(ふうた)さん(20)も高校球児だったが、ボールが目に当たり失明の危険があったため途中退部した。また、母の由香さん(42)にガンが発覚。手術は成功したが、現在も投薬治療を続けており体調が思わしくない時もあるという。「大学に行けばお金がかかりますが、プロに行けるならお金がもらえる。楽をさせてあげたい」。兄の無念を晴らし、母を元気づけたい思いが原動力だ。

 母の弟で中日、ソフトバンクで活躍した叔父の田上秀則氏(現大産大付監督)からは「周りに流されず、自分がやらないといけないことを考えてやっていれば結果は出てくる。人のために、誰かのために頑張ろうという気持ちを持って頑張れ」と激励された。指名漏れなら進学の選択肢も残すが、吉報が届くと信じている。 (北野 将市)

 ◆田上 奏大(たのうえ・そうた)2002年(平14)11月26日生まれ、大阪府大阪市出身の17歳。小2からバイキングジュニアで野球を始め投手兼外野手。6年時にはオリックスJr.入り。住之江中時代は西成ボーイズでプレー。履正社では1年秋から外野手でベンチ入りし2年春夏と今夏の交流試合で甲子園出場。1メートル85、83キロ。右投げ左打ち。

 《履正社で4人指名待つ》今回のドラフトで、履正社からは小深田大地、関本勇輔、田上奏大、内星龍の4人が候補選手に挙がる。同一年度のドラフトで同じ高校からの大量指名は4人が最多で、18年の大阪桐蔭まで5度。大学、社会人チームを含めた全体で4人以上は同じく18年の東洋大4人まで24度。最多は5人で4度あり、最新は05年大学生・社会人ドラフトのNTT西日本で岸田護(オ・3巡目)、藤井淳志(中・3巡目)、脇谷亮太(巨・5巡目)、斉藤信介(中・6巡目)、山崎隆広(楽・9巡目)が指名されている。

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