黒子役に徹する広島・石原慶、19年目の挑戦

[ 2020年2月9日 08:30 ]

<広島キャンプ>ピッチングを終えた森下(右)と話す石原慶(撮影・奥 調)
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 広島が1軍キャンプを張る宮崎・日南の天福球場。午後の打撃ローテーションが始まると、石原慶の姿はグラウンドから消える。ある時はブルペン奥の室内で黙々と打撃練習に励み、ある時は球場左翼後方の坂道でダッシュを延々と繰り返す。報道陣に配られる練習メニューには載っていない孤独な作業だ。

 「もう1度優勝したい。去年(のV逸)が悔しいし、個人目標よりも、チームとして勝ちたい。それが僕のモチベーションです」
 首脳陣に意向を聞かれ、1軍キャンプ始動を望んだ。既に40歳。暖かい沖縄で2軍と一緒にじっくり調整する手もあったが、生き残りを懸けた厳しい空間の中に敢えて身を置く選択をした。他のベテランと同様に力は認知されており、個人に主眼を置くなら何も1軍で動く必要はない。

 「僕の場合(1軍2次キャンプ地の)沖縄で合流するかどうかわからない。だったら、上の空気感の中でやっておきたかったし、若い捕手たちと一緒に練習する機会があった方がいい…と思って」

 1軍は11日の練習終了後、2軍と入れ替わる形で日南から沖縄へ向かう。選手は絞り込まれるため、仮に石原慶が2軍でスタートしても、1軍が沖縄入りする際にそのまま居残れるか不透明だ。ならば1次キャンプだけでも若い坂倉、中村奨、新人の石原貴らと一緒に汗を流し、言葉と背中で伝えたい――。

 「この年齢だからできることもあるだろうし、掛けられる言葉もあると思うんでね」

 1月の合同自主トレでは、投球で若手らの打撃練習をサポートする姿もあった。「アレは打撃投手の人数の兼ね合いがあるし、自分の肩をつくるためでもあるので、深い意味はない」と笑うが、こうした年長者の何気ない立ち振る舞いが、チームに良い影響を及ぼすのは間違いない。

 「何か自分が役立てることがあれば。できることをやりたい」
 19年目。1軍の捕手枠を考えれば、楽観視できる立場にはない。ジョンソンの女房役は保障されておらず、もう代えるべき…との声すら聞こえる。石原慶は百も承知。だからといって、本人の思考や行動は変わらない。根底にあるのは常にチーム優先の野球観だ。

 成績が伴わない集団には、得てして楽をしたがる自己チュウのベテランが跋扈ばっこする。歴史が示す教訓。現役晩年にこそ、厳しい状況でこそ、その人物の本質が現れる。(江尾 卓也)
  

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2020年2月9日のニュース