299分の1のMVP投票用紙はまだシュレッダーにかけられていないけど…

[ 2019年12月4日 20:45 ]

「NPBアワーズ2019」で表彰された選手たち。前列は左からヤクルトの村上宗隆内野手、巨人の坂本勇人内野手、西武の森友哉捕手、ソフトバンクの高橋礼投手
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 【永瀬郷太郎のGOOD LUCK!】おそるおそるNPBに聞いてみた。

 「残してあるんですか?」

 最優秀選手(MVP)と最優秀新人、ベストナインの投票用紙である。

 「2年分は残してあります」

 よかった。まだシュレッダーにかけられていない。巨人・大竹寛の名前をMVPの1位に記した投票用紙は現存しているのだ。

 その用紙には社名も記者の名前も明記されている。黒塗りされちゃいないだろうが、資料請求するつもりはない。

 本人から名乗り出てほしい。そして聞かせてよ。今季32試合に登板して4勝0敗、8ホールド、防御率2・77という成績の中継ぎ投手を3名連記のMVP投票で一番大きい5ポイントが与えられる1位に挙げた理由を。

 投票権は全国の新聞、通信、放送各社に所属してプロ野球を5年以上担当している記者に与えられる。今年の有効投票数はセ・リーグ299、パ・リーグ254。299分の1の見識を伺いたい。

 ちなみに私は1位から順番にいずれも巨人の坂本勇人、山口俊、丸佳浩に投票した。あえて理由を説明する必要はあるまい。

 大竹さん、名前を出して申し訳ない。決してあなたが悪いんじゃないんだけどね。

 299分の1の記者が名乗り出てくれないなら、やり方を見直した方がいいかもしれないね。

 MLBではBBWAA(全米野球記者協会)が新人王、サイ・ヤング賞、MVP、最優秀監督賞を投票で選んでいるが、全てガラス張り。誰が誰に投票したか、BBWAAのホームページで公表されている。

 NPBのように一定の取材経験を持つ記者全員に投票権を与えるのではなく、メジャー球団の本拠地にあるBBWAA各支部がそれぞれの賞に投票する記者を1人ずつ指名。どの賞も投票する記者は30人なのである。

 投票権を与えられた記者は誇りと責任を持って投票。昨年、大谷翔平(エンゼルス)は30人中25人の1位票(MLBでは新人王も日本のMVP同様3名連記)を集めて新人王に輝いた。それを伝えたスポニチ本紙には投票した30人の全投票内容を掲載。投票した記者のうち12人の選考理由も紙面に載せている。

 一方、記名投票ではあるが、誰が誰に投票したか公表されない日本。MVP以外にも目を背けたくなるような投票が見られる。ほんの一部なんだけどね。

 これはNPBから投票を委嘱されて開票作業も行っている運動記者クラブの問題だ。

 来年からはファンやメディアから請求があれば、記者名と社名を公表するようにしたらどうだろうか。誇りと責任を持って投票したのなら、堂々と投票理由を説明できるだろう。

 名前が明かされるのなら投票しないって記者が出てくるかもしれないけど、そういう人はお引き取り願えばいい。誇りを持っている記者は必ず投票するよ。

 それでもし成立しないってことになったら、いっそのこと記者投票を返上して選手間投票にしてもらえばいい。(特別編集委員)

 ◆永瀬 郷太郎(ながせ・ごうたろう)1955年生まれ。岡山市出身。82年の巨人担当を皮切りに野球記者歴38年。

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2019年12月4日のニュース