野球殿堂候補に古関裕而さん 応援歌「六甲おろし」「闘魂込めて」生みの親 

[ 2019年12月4日 05:30 ]

来春のNHK朝ドラ「エール」のモデルにもなった作曲家の故・古関裕而さん(福島市古関裕而記念館提供)
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 野球殿堂博物館は3日、来年の野球殿堂入りの候補者を発表した。競技者表彰に加えて特別表彰の候補も初めて公表され、「栄冠は君に輝く」や「六甲おろし」「闘魂こめて」など数多くの野球の応援歌を手がけた作曲家の故古関裕而氏が候補入りした。同氏は来春のNHKの連続テレビ小説「エール」のモデルにもなっている。それぞれの表彰は投票によって決定。来年1月14日に殿堂入りが発表される。

 昭和の時代に野球に関する数多くの曲を残した古関氏に、令和を迎えた今、再び脚光が当たろうとしている。野球殿堂の特別表彰は、審判やアマチュアを含めて球界に貢献があった人物が対象。02年には俳人の正岡子規が殿堂入りしているが、作曲家が候補入りするのは初めてだ。野球殿堂関係者は「素晴らしい業績があり、特別表彰では文化的貢献という観点でも(候補として)検討していたので」と説明した。

 古関氏は1909年に福島市で生まれた。戦前から作曲家として活動し、スポーツ関係でも数多くの名曲を世に送り出した。特に野球では1931年に作曲した早大の第1応援歌「紺碧の空」を手始めに、今でも歌い継がれる曲があまたある。関係者によると古関氏は野球が好きで、「紺碧の~」を作曲する際には「六大学野球の行われる神宮球場に何度も足を運んで声援を送った」という。

 夏の甲子園の大会歌「栄冠は君に輝く」も古関氏の手によるもの。プロ野球では今でも阪神ファンに愛され、甲子園で熱唱される応援歌「六甲おろし」や巨人の「闘魂こめて」などを作曲した。64年東京五輪の行進曲「オリンピック・マーチ」も手がけており、20年東京五輪の年に殿堂入りとなれば不思議な因縁とも言える。

 その来年春には、古関氏と金子(きんこ)夫人をモデルにしたNHKの連続テレビ小説「エール」(主演・窪田正孝)も放送される。舞台の一つとなる地元・福島市には「古関裕而記念館」があり、同館関係者は「東京五輪の野球競技は福島で開幕する。64年大会から縁のあるオリンピックが実施される年にドラマが放送され、殿堂の候補にも選んでいただいた。大変感激しています」と話した。

 《02年には俳人の正岡子規》○…特別表彰で選ばれた文化人で代表的なのは、2002年に殿堂入りした明治時代の俳人、正岡子規だ。1884年、東大予備門時代にベースボールを知り熱中。89年には故郷の愛媛・松山にボールとバットを持ち帰り、後輩たちに伝えた。幼名が升(のぼる)だったこともあり雅号を「野球(の・ボール)」とした。また、野球の訳語を考案した教育者・中馬庚(ちゅうま・かのえ)も1970年に殿堂入りを果たしている。

◆古関 裕而(こせき・ゆうじ)本名・勇治。1909年(明42)8月11日生まれ、福島市出身。30年9月、コロムビアの専属作曲家として上京。以来作曲活動を続け、総作品数は約5000曲を数える。戦後にはNHKラジオドラマ「鐘の鳴る丘」「君の名は」などの主題歌を作曲。スポーツ関係では早大応援歌の「紺碧の空」 や「栄冠は君に輝く」、東京五輪の「オリンピック・マーチ」など。89年8月18日死去(享年80)。

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