マー君、復活13勝!スプリット切れ味もフォームも“前のまま”

[ 2014年9月23日 05:30 ]

ブルージェイズ戦で復帰して75日ぶりに先発し、登板前にプレートに触れるヤンキース・田中

ア・リーグ ヤンキース5―2ブルージェイズ

(9月21日 ニューヨーク)
 同じ姿でマー君が帰ってきた。右肘の内側側副じん帯部分断裂で故障者リスト(DL)入りしていたヤンキースの田中将大投手(25)が21日(日本時間22日)、ブルージェイズ戦で75日ぶりに復帰。5回1/3を5安打1失点と好投し、13勝目(4敗)を挙げた。最速93マイル(約150キロ)をマークし、伝家の宝刀スプリットも以前と変わらない切れ味を披露するなど、周囲の不安を一掃。名門球団の新エースと期待される男が、完全復活への第一歩を刻んだ。
【試合結果】

 復帰の喜びより、悔しさがこみ上げた。2―1の6回。1死一、二塁のピンチを迎えると、投球数が予定の70球に達した田中は交代を告げられた。ヤンキースタジアムがスタンディングオベーションに包まれる中、帽子を取って応えた後、首を横に振った。その姿こそ、田中が戦いの場に戻ってきた証だった。

 「肘の状態を確認しながら、チームの勝利を引き寄せられるような投球をしたいと思っていた。ほとんど、そこはクリアできたのかなと」

 5回1/3を5安打1失点で無四球。7月3日以来の13勝目を挙げた田中は、会見では冷静に振り返った。そして、肘の状態を問われると「大丈夫です」ときっぱり言った。
 7月8日の登板後に右肘に痛みを訴えた。しかし、復帰に約1年半を要するじん帯再建手術(トミー・ジョン手術)ではなく、注射で患部の組織を再生するPRP(多血小板血しょう)療法と肘周りを強化するリハビリで復帰する道を選んだ。前半戦だけで12勝を挙げた田中と同じ姿で戻ってくるのか、ニューヨークのメディアも注目した。

 午後1時9分。そっと右手でプレートを触った。いつもの儀式。初回、先頭レイエスに投じた初球は92マイル(約148キロ)の直球だった。いきなり連打を浴び、次打者を併殺に打ち取る間に1点を失ったが、2回から5回までは打者14人で許した出塁は川崎の右翼線二塁打と死球の2人だけ。真剣勝負の中で、肘への不安は「だんだん(球数を)重ねていくごとになくなっていった」。

 直球は最速150キロを計測。スプリットの切れも故障前と遜色なかった。故障後は肘への負担を考え、腕の振りがコンパクトなフォームへの改造も模索した。しかし、ブルペンではイメージ通りの球が行かない。そこで出した結論は「今までの田中」をベースにしたマイナーチェンジ。フォームはほぼ元のままで、ステップ幅も同じ6足分だ。ジョー・ジラルディ監督は「スプリット、スライダーも以前と同じ。全てがケガをする前と同じだった」と目を細めた。

 わずかに見えた変化は軸足の右足の動き。これまで力を入れる際、特に変化球を投げる際に右足を背後で高く蹴り上げることが多かった。この日は必要以上に蹴り上げる場面はほぼなかった。無駄に力んでバランスを崩せば肩肘への負担が増す。力を入れ過ぎないという意識の変化はあった。

 チームのプレーオフ進出は絶望的な状況だが、田中が復帰登板で見せた姿は、来季への希望の光となる。「あす、何も問題がなければ、あと1試合。心配する部分はだいぶ軽減すると思う」。順調なら、27日(日本時間28日)のレッドソックス戦で今季最終登板する。完全復活は来季となるが、約2カ月半、手術と隣り合わせだった田中には大きなハードルを越えた確かな手応えがあった。

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