松井臨時コーチの気配り 指導1人目は2軍の“元55番”大田

[ 2014年2月2日 05:30 ]

打撃練習する大田と談笑する松井臨時コーチ

 プロ野球は1日、宮崎、沖縄の両県で12球団が一斉にキャンプインした。巨人の宮崎キャンプでは臨時コーチを務める松井秀喜氏(39)が指導者としてのキャリアをスタートさせた。12年ぶりの古巣復帰。「指導1人目」には、同じ背番号55の後継者と期待されながら振るわず、今季から44番に変更された大田泰示外野手(23)を選んだ。打撃投手も務めるなど精力的に動き回り、「ゴジラ効果」も手伝い、巨人キャンプ初日では史上最多の1万6500人のファンが集結した。

 松井臨時コーチが動いた。2軍のひむかスタジアム。打撃ケージ裏で岡崎2軍監督と談笑後、おもむろに、背番号44を背負う大田の元へ近づいた。ティー打撃を続ける23歳は熱視線に気付いた。振り抜くのではなく、パンチを利かせ、強いインパクトで捉えるフォームをしながら、尋ねた。

 大田 メジャーの人って、こういうイメージですよね?

 松井コーチ そうだね。でも、人それぞれだと思うよ。

 大田は入団した09年に松井コーチ退団後、6年間空き番になっていた背番号55を託された。だが、5年間通算で59試合、打率・197、2本塁打、12打点。結果を残せず、今季から44番に変更された。1メートル88、100キロの体格は、松井コーチの現役時代とほぼ同じ。55番という重圧もあり、開花しきれない大器を、最初の指導対象に選んだ。

 前日の集合日に初対面したばかりだが、松井コーチも大田の存在を常に気に掛けていた。「もちろん、それ(55番)もあるし、僕は宮崎の間はいますから。少しでも彼にプラスになってくれれば」。フリー打撃にも熱視線を送り、大田も3連発を含む8本の柵越えで応えた。まだ初日。技術的に具体的な助言をもらったわけではない。大田は憧れの存在に「言葉によって、というより、存在によっての刺激が強い。それは僕だけじゃなく、みんな」と、グラウンドに張り詰めた確かな「松井効果」を代弁した。

 その後も2軍ブルペンで昨季開幕投手を務めながら、今キャンプは2軍スタートの宮国らの投球を視察。サンマリン宮崎で1軍の主力選手のフリー打撃も見学し、最後は木の花ドームで亀井の居残り特打の打撃投手まで務めた。18分間にわたり95球を投げ、ボール球はわずか7球。「ストライクが入って良かった。僕が壊れなければ投げ続けますよ」と笑顔。同じ左打者で伸び悩む亀井も「投げてもらえるとは思わなかったので、夢のようでした」と感謝した。

 練習後に松井コーチから報告を受けた原監督は「何人かの選手の名前も挙がった。1月の段階で彼と何度か会い、“全て自由だ”と。“遠慮なくこの時間を使ってくれ”と伝えた」。指揮官の言葉通り、若手に始まり、主力や中堅と幅広く見て回った。午後8時からの夜間バント練習にも参加。指導初日を終えた松井コーチは「選手の元気な姿、はつらつにプレーする姿を見て、頼もしいと感じました」と振り返った。帰ってきたその大きな背中を、誰もが頼もしいと感じていた。

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