黒田 サヨナラ呼ぶ好投!「漫画の世界という感じ」

[ 2012年10月12日 06:00 ]

オリオールズ戦の9回、代打イバネスの同点ソロをガッツポーズで喜ぶヤンキースの黒田(左)

ア・リーグ地区シリーズ第3戦 ヤンキース3―2オリオールズ

(10月10日 ニューヨーク)
 その瞬間、ヤンキースの黒田はベンチ裏でアイシング中だった。グラウンドへ飛び出すと、そこはもう、お祭り騒ぎだった。「漫画の世界という感じがした。神懸かり的な部分がある。(サヨナラ弾は)リアルタイムで見られなかった。球場で見たかった」。降板時は硬かった顔に笑顔が広がった。

 白星に値する投球だった。3回、新人フラーティに初球のスライダーを右翼席に運ばれた。だが4回2死満塁の2度目の対戦では、2球で追い込み内角94マイル(約151キロ)のシンカーで投ゴロに打ち取った。「あそこを抑えられたのは大きかった」と力勝負を振り返った。

 5回に先頭の新人マチャドに再びソロを浴びるとガラリと配球を変えた。それまで初球は打者18人中10人(56%)に変化球から入っていたが、被弾後は初球の変化球は14人中2人(14%)のみ。変化球が頭にあったオ軍打線をかく乱し、2発目以降は1安打も許さなかった。

 黒田は登板前日と当日の2回にわたり、分厚いリポートを広げ、30分以上も相手のビデオを見ることを習慣にしている。ラリー・ロスチャイルド投手コーチも「豊富な情報を利用しない手はない。グレグ・マダックスのように熱心だね」と通算355勝の精密機械に姿を重ねる。序盤は変化球を意識させながら、8月31日の前回対戦で41%だった速球系は、この日は62%(105球中65球)に達した。同地区のライバル相手に前回とは違う投球を見せたことで、黒田自身が「だまし合い」と例える打者との駆け引きに勝った。

 9回に1死を取り、降板する際にはスタンディングオベーションで迎えられた。それでも「負けた状態でマウンドを降りるのは、自分の責任を全うできていない」と言った。世界一の瞬間まで、満足することはない。

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2012年10月12日のニュース