マー君沢村賞 でも雄叫び、ガッツポーズに苦言

[ 2011年11月15日 06:00 ]

沢村賞に輝いた楽天・田中は受賞の心境を色紙に記し笑顔

 プロ野球創設期の名投手、故沢村栄治氏を記念した「沢村賞」の選考委員会(土橋正幸委員長)が14日、都内で開かれ、楽天・田中将大投手(23)が初めて選出された。最多勝、最優秀防御率、最高勝率と主要3部門でタイトルを獲得し、基準7項目を全てクリア。日本ハム ・ダルビッシュ有投手(25)を僅差で抑えた。文句なしの成績ながら、選考委員からは「ガッツポーズ禁止」の異例の注文も。来季は球界のエースとして、マウンドでの立ち居振る舞いも注目される。

 オーバーホール先の秋田県内で吉報を受けた田中はまさかの「ダメ出し」に思わず口ごもった。チームでは08年の岩隈以来となる沢村賞を受賞した右腕に対し、選考委員が唯一つけた注文は、マウンドでの立ち居振る舞い。土橋委員長を含む5人全ての選考委員から、派手なガッツポーズや雄叫びを控えるように要望されたことを伝え聞くと「ノーコメントです」と苦笑いを浮かべた。

 ピンチで三振を取った時に「どうだ!」と言わんばかりに吠えるのは、田中のトレードマーク。日頃から「気持ちが高ぶるとガッツポーズや雄叫びは自然に出てしまう」と話す。しかし、沢村賞は品格も参考基準として加味されている。今オフにはダルビッシュがメジャー移籍する可能性があり、来季は田中が名実ともに球界を引っ張っていく存在となる。期待しているからこそ、選考委員は厳しい注文をつけた。

 田中も沢村賞の重みは十分に理解している。「投手タイトルの中で一番名誉な賞。今後の自信になると思う。満足することなく、もっともっと進化しないといけない」。周囲の期待を感じ取り、自覚を深めた。

 有言実行の受賞だった。昨年、同い年の広島・前田健が手にしたことで、強く意識するようになった。「先にいかれたなと。“今年は自分が”と思っていた」。今春キャンプの朝の声出しでは、チームメートを前に「今年は沢村賞を獲ります!」と宣言。さらに、3月11日に東日本大震災が発生し「地震を機に、今季に対する思いが強くなった」と気持ちを高めた。

 19勝、防御率1・27、勝率・792で投手3冠を獲得したが、田中に慢心はない。「去年より投球内容は良くなっていますが、課題を挙げればきりがない。全ての面で上を目指していきたい」。ダルビッシュとのハイレベルな争いを制したことにも「数字上で上回っただけで、投手としての技量はまだまだ足元にも及んでいない」とさらなる高みを見据えている。

 今季は1人で14の貯金をつくりながら、チームは5位と低迷した。「チームに求められていることは自分で勝ち負けをつけること。試合の最後までマウンドに立ち続けることだと思う。一番の目標はリーグ優勝」。個人としては最高の栄誉を手にした。来季はハートは熱く、マウンド上では悠然と振る舞う「ニュー田中」でリーグ優勝を目指す。

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