Gサヨナラ!実松、大殊勲2年9カ月ぶり安打

[ 2011年5月5日 06:00 ]

<巨・神>9回無死一、三塁、左前にサヨナラ打を放ち、ガッツポーズする実松

プロ野球 セ・リーグ 巨人4-3阪神

(5月4日 東京D)
 巨人・実松は打席で思った。「絶対打つ!」。同点の9回無死一、三塁でマウンドには同い年の藤川。直球を2球連続ファウルで追い込まれた。3球目。135キロのフォークに体を沈め、食らいついた。打球は左中間で弾む。ナインに頭を叩かれ、水浸しのヒーローはすでに記憶が飛んでいた。

 08年8月19日のヤクルト戦(神宮)以来の安打は、プロ13年目で初のサヨナラ打。そしてチームに本拠地初勝利をもたらした。お立ち台では球種、感触などを問われ「覚えてない…」を連発して笑いを誘った。正捕手の阿部が故障で開幕から不在で、鶴岡、加藤に続く3番手捕手として4月20日に1軍昇格。この日も8回守備からの途中出場だった。今季初打席での殊勲打に「サヨナラ打は人生初」とはにかんだ。

 98年、日本ハムにドラフト1位で入団。名護キャンプの夜間練習は当時もチームメートで同じ捕手だった小笠原と一緒に汗を流した。「野球のこと、人間関係のこと、いろいろ教えてもらった。あの時の一瞬一瞬を一緒に過ごせたのは財産」と言う。東京を本拠地としていた当時のチームは01年から3年連続Bクラスに低迷していた。苦楽を共にした先輩が、通算2000安打に王手をかけた。プロ通算86安打目のサヨナラ打は、誰よりも記録達成を望む後輩の「前祝い」でもあった。

 天国の「兄貴」にも雄姿を見せた。昨年4月に急逝した木村拓也コーチ(享年37)だ。今年から10グラム重い910グラムのバットを使用。振りやすさと反発力を兼ね備えたバットは、小笠原と同じように慕っていた同コーチと同じモデルだ。この日も試合開始の6時間以上前の午前7時30分に球場入り。「試合に出ても出なくても準備が大事だぞ」という木村コーチの教えが、いつも胸にある。

 劇的勝利で借金を1とした原監督は「2番(脇谷)、3番(小笠原)がサイドブレーキを引いているけど、みんなでカバーした」と笑顔。反攻を掲げた5月。実松のような伏兵の力は必要不可欠だ。

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