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土佐が涙の途中棄権 救急車で搬送

[ 2008年8月18日 06:00 ]

途中棄権という残酷な結果となった土佐

 【北京五輪 マラソン】お家芸で無残な結果が待っていた。日本勢2連覇中の女子マラソンが行われ、右足を痛めていた土佐礼子(32=三井住友海上)は、25キロすぎにマラソン11戦目で初の途中棄権。涙を流して救急車で病院に搬送された。中村友梨香(22=天満屋)も2時間30分19秒で13位。アテネ女王・野口みずき(30=シスメックス)が大会直前に故障欠場した日本勢は、1988年ソウル五輪以来20年ぶりにメダルを逃した。

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 ゴールが果てしなく遠かった。中間点にも達していない16キロ付近で、土佐が先頭集団から離れていく。ゆがんだ表情、右足をかばうフォームが明らかな異常を告げていた。25・2キロの給水点で、最愛の夫・村井啓一さん(34)の「もういい。やめろ!」という悲痛な叫びの中、日本チームのスタッフに止められて土佐の北京五輪が終わった。
 マラソン11戦目で初の途中棄権。村井さんに背負われて救急車で病院へ。三井住友海上の鈴木総監督によると、救急車の中では「動揺して話せない状態」だったという。現実を受け入れられず夫の胸で泣き続けた土佐は、チームを通じて「途中棄権という結果になり、申し訳ありませんでした」とコメントした。
 故障欠場した野口だけでなく、土佐もまた不安を抱えていた。長年、左足外反母趾(し)の痛みと付き合ってきたが、7月の中国・昆明合宿中に初めて右足外反母趾に痛みが出た。患部をかばううち、今度は右足人さし指付け根付近に強烈な痛みが走る。帰国後のMRI検査、レース後のエックス線検査でも骨に異常は見当たらず、原因は最後まで分からなかった。レース1時間前には痛み止めの薬を服用して出陣。打てる手はすべて打ったが「10キロすぎから痛みがひどくなり、それ以降は接地するごとに激痛があり、足がつけない」(土佐)という状態では完走は不可能だった。
 今大会で第一線から退く意向を示していただけに残酷すぎるラスト・マラソンだが、その一方で胸に秘めた夢がある。今年1月、土佐は夫に告げた。「世界には、子供を産んでからも走っている選手がいっぱいいる」。松山大の先輩・村井さんとは04年アテネ五輪後に結婚。競技に集中するため、土佐の拠点・東京と、村井さんの職場がある松山で別居生活が続いた。今後について土佐は「心身共に休養に充てたい」と話し、昨年8月末に松山市内に完成した新居でともに生活する。“鳥の巣”に帰還できなかった土佐だが、帰るべき“愛の巣”がある。そしていつか、母として42・195キロに帰ってくる。

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2008年8月18日のニュース