【桜花賞】竹内厩舎 美濃伸明厩務員“持ってる馬”はお任せ シンリョクカ激走

[ 2023年4月5日 05:30 ]

桜花賞に挑むシンリョクカと美濃厩務員
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 G1企画「時の人」。桜花賞は出走馬決定順18番目での参戦がかなったシンリョクカ陣営にスポットを当てる。2着激走の阪神JFでは9分の3の狭き抽選をくぐりぬけたが、今回はライバルの回避でぎりぎり出走ボーダー内に滑り込んだ。そんな“持ってる馬”を担当する美濃伸明厩務員(56)は、今なお語り継がれる25年前の大事件の立役者の一人だった。

 もぐもぐ。カイバを口いっぱいに頬張るシンリョクカをうれしそうに見つめる美濃厩務員が「いや~、楽になったよ」とほほ笑む。デビュー当初から同馬の食は細く、以前は一皿にさまざまな種類のカイバを並べる“ビュッフェ形式”で最低限の食事量を何とか確保していた。「10日前ぐらいからかな、急に奇麗に平らげるようになった。不思議だね」。工夫が実り、今では普通の食事メニューでも食べ残さなくなった。

 美濃厩務員はこの道30年以上の大ベテラン。98年日経賞では担当馬テンジンショウグンが歴史に残る大波乱を演出した。直前に6戦連続で障害戦を使っていたとあって単勝355・7倍の12頭立て最低人気。ゴール直後、実況アナウンサーは同馬の名前を連呼したのち、「もう一度言います。勝ったのはテンジンショウグンです」とその衝撃を伝えた。「30年以上やっているから、もう何年前の話かも覚えていないよ」と笑うが、JRA重賞史上最高の馬連21万3370円は四半世紀たった現在も破られていない伝説の配当だ。

 大事件を引き起こした仕事人をして、シンリョクカは「日々のしぐさからも能力の高さは感じる。うるさい牝馬も多いけど、とにかく余計なことをしない。筋肉が硬くならないのも特長で運動神経がいい」と言わしめる逸材。「普段の性格はお嬢さまって感じで我が強い。成長の段階でいうと、ようやく年少さんから年長さんになったぐらいかな(笑い)」と伸びしろも無限大にある。

 キャリア1戦で挑んだ阪神JF。新馬戦より前半3Fの通過が3秒も速いG1の流れにも戸惑うことなく、2着に食い込んだ。「初めての長距離輸送を心配していたけど、様子も体重も変わらなかった。そこは自信を持って送り出せたけど、あの走りにはびっくりしたね。あれだけご飯を食べなかった馬が頑張って(笑い)。凄かったね」。日経賞のテンジンショウグンと同じ「12番人気」の低評価を覆す激走だった。

 前哨戦を使わず直行を選択した桜花賞。当初は出走馬決定順19番目(フルゲート18頭)で皐月賞へのスライドも視野に入っていたが、先週末に他馬の回避で出走がかなった。「馬自体はいい感じに仕上がっている。週末の追い切りの前に出られることが分かったので調整はしやすかった」と万全の態勢で臨む。大一番を前に「ベテランだから平常心ですよ。リバティアイランドはめちゃくちゃ強いし、胸を借りるつもりでいきます」と柔和な表情を浮かべる美濃厩務員の横でリラックスするシンリョクカの磨き上げられた馬体はダイヤモンドのように輝いていた。

 ◇美濃 伸明(みの・のぶあき)1966年(昭41)8月24日生まれ、千葉県出身の56歳。父も厩務員で中山競馬場で生まれた。19歳でトレセン入り。矢野照正厩舎などを経て、竹内厩舎では19年の開業当初から従事している。思い出の担当馬はテンジンショウグン。

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