【天皇賞・秋】極悪馬場も出遅れも乗り越えたキタサンブラックのような快走を

[ 2022年10月28日 05:30 ]

17年の天皇賞・秋で雨中のレースを制したキタサンブラック(中央)
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 【競馬人生劇場・平松さとし】

 2017年10月29日。この日、天皇賞・秋(G1)の行われた東京競馬場は史上まれにみる極悪馬場となった。

 その舞台に1番人気馬であるキタサンブラックを送り込んだのが清水久詞調教師。レース前の心境を次のように述懐した。

 「道悪は不安でしたけど、あまりにひどくなったので、割り切ることができました」

 そもそも春の段階ではこの天皇賞に使わない公算でいた。秋は凱旋門賞(仏、G1)への挑戦プランがあったのだ。しかし、宝塚記念(G1)でまさかの9着に敗れたことで遠征は白紙撤回。国内戦に専念することが決まった。しかも、オーナーである北島三郎氏から重大な発表があった。

 “年内で引退”

 残すは天皇賞・秋(G1)、ジャパンC(G1)、有馬記念(G1)の3戦のみで種牡馬入りすると発表されたのだ。

 いろいろあった末での大事な秋初戦がいきなり極悪馬場となったわけだが、試練はそれだけではなかった。ゲートが開くと、なんとキタサンブラックが出遅れてしまったのだ。しかし、清水師はそれを「意外と冷静に見ていられた」と言い、続けた。

 「ブラックは馬場状態や距離、競馬ぶりなど、なんでもこなせる馬でした。だから“後ろからになったら追い込めば良い”。それくらいの気持ちで見ることができました」

 すると、コーナーで武豊騎手に誘われてインを突いたキタサンブラックが、一気に先団へ。直線では少しでも馬場状態の悪くない外へ出される余裕を見せて、先頭に立つと、最後は2着サトノクラウンを首差抑えて自身6度目のG1制覇を達成。勝ち時計は実に2分8秒3も要していた。

 「極悪馬場も出遅れもはねのけて、秋初戦を最高の形で飾ってくれました。改めて立派な馬だと感じました」

 天気予報を見る限り、今年は良馬場での天皇賞となりそうだが、キタサンブラックのような素晴らしい馬が好パフォーマンスを見せてくれることを期待しよう。 (フリーライター)

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