パリで武豊の涙が見られるか

[ 2022年6月3日 05:15 ]

5月29日の日本ダービーを制した武豊とドウデュース
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 【競馬人生劇場・平松さとし】

 5月29日に第89回東京優駿(日本ダービー)が行われた。ご存じの通り、これを制したのは武豊騎手の乗るドウデュース(牡3=友道)だった。

 武豊騎手は、これが実に6度目となるダービー制覇。自身が持つダービー最多勝記録を53歳で更新。現役にしてレジェンドの偉業達成に、コロナ禍以降では初めて6万超の観衆が集まった競馬場は沸きに沸いた。

 ゴール後、惰性で向正面まで行ったドウデュースと天才騎手が芝コースを逆戻りしてウイニングランならぬウイニングウオーク。徐々に大きくなった拍手は、伝説のジョッキーの帰還を待ち切れないと言わんばかりに“ユタカコール”へと変わった。

 その時のことだった。武豊騎手が顔の汗を拭うそぶりを見せた。一瞬、涙を拭くようにも見える所作だったが、今まで彼が競馬で泣いたのを見たことはない。事実、本人も以前、次のように言っていた。「勝てばうれしいし、負ければ悔しいです。でも、勝ったり負けたりで泣くことはありませんでしたね」

 だから汗を拭っただけと分かったのだが、さらに次の瞬間「おや!?」と思う動きを見せた。ゴーグルを一度、外したにもかかわらず、改めて遮光式の黒色のゴーグルだけを着け直してから、スタンド前へ戻ってきたのだ。

 それを見て、6度目のダービー制覇となる名手をしても、さすがに今回は込み上げるものがあったのか?と思った。自分を応援してくれる松島正昭オーナーの馬でダービーを勝ち、凱旋門賞への切符を手にしたのだから、あながちおかしくないと思ったのだ。

 後日、確認すると、彼は笑いながら答えた。「ゴーグルを着けたまま戻るつもりだったけど、ズレたので一度、外しただけです。黒いのをしたのも特に意味はありません」

 今回は当方の考え過ぎだったようだが、10月のパリでは本当に涙を流す日が来るだろうか。いや、クールな彼だから、飛び切りの笑顔で終始するのかもしれない。このどちらかが見られることを期待したい。(フリーライター)

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2022年6月3日のニュース