【朝日杯FS】ドウデュース100点 ロダンの彫刻のような安定感 中距離体形もマイル十分乗り切れる

[ 2021年12月14日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

ドウデュース
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 偉容を誇る2強ボディーだ。鈴木康弘元調教師(77)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第73回朝日杯FS」(19日、阪神)では札幌2歳S優勝馬ジオグリフと共に重賞初挑戦のドウデュースにも満点を付けた。達眼がドウデュースに捉えたのは、あの有名なブロンズ像の偉容。ハーツクライ産駒がサリオス(19年)に続き2歳マイル王に輝くか。

 その年の世相を漢字1文字で表す「今年の漢字」が「金」に決まりました。今年の朝日杯FS有力馬を漢字1文字で表すとすれば…。ジオグリフ、ドウデュース、セリフォス、ダノンスコーピオンの無敗馬4頭の馬体を見ているうちに「偉」という文字が頭に浮かんできました。日本国語大辞典によると、「大きく立派なこと。すぐれているさま」の意味。中でも、2歳馬離れした偉容を誇るのがドウデュースです。

 500キロ前後のボリュームあふれる馬体。膝(前肢)と飛節(後肢)が際立っている。彫刻家ロダンの「考える人」を想起させる姿。台座に座った裸の男が右肘を左足の上に乗せながら拳を顎に当てて物思いにふけるあの有名なポーズですが、ドウデュースの膝と飛節はその男の拳のように大きくて立派です。立ち姿は大地に根を生やしたように安定している。

 「ロダンは彫像に安定感を持たせるため手と足を必要以上に大きく作ったのです」。私がシャンティイ調教場(フランス・パリ郊外)に厩舎留学した半世紀前のこと。休日にパリのロダン美術館を訪れると、学芸員がこんな説明をしてくれたものです。ドウデュースの立ち姿に安定感があるのも大きな膝と飛節を持っているからです。

 「考える人」の彫像は右肩と背中の筋肉が盛り上がっていますが、この鹿毛の偉丈夫は分厚い筋肉を全体にバランス良く付けている。各部位のつながりには遊びがあります。中距離体形とはいえ、マイル戦も雄偉な筋肉で乗り切れるでしょう。冬の優しい日差しに茶色い光沢を放つ被毛。ロダンのブロンズ像のように輝いています。体調もかなりいい。

 精かんな面構え。強い目力には意志の強さがうかがえます。ハミの受け方は幼いが、浮足立つこともなく、台座に腰を下ろした裸の男みたいにどっしりと構えています。朝日杯FSをステップに来春はクラシックの王道を歩む偉丈夫の姿です。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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