【オークス】デアリング100点!「チェリーブラッサム」思い出す進化“新しい私”

[ 2020年5月19日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

<オークス>松田聖子の「チェリーブラッサム」を思い出させる成長を見せたデアリングタクト
Photo By 代表撮影

 チェリーブラッサム(桜花)の女王が目覚めた。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第81回オークス(24日、東京)では無敗桜花賞馬デアリングタクトに唯一の満点を付けた。達眼が捉えたのは松田聖子の昭和のヒットナンバー「チェリーブラッサム」、「赤いスイートピー」を思い出させる成長ぶり。有力候補の馬体を春にちなんだヒットソングになぞらえながら解説する。 オークス

 コロナ禍と闘う人々を歌で応援する動きが広がっています。作詞家の松本隆さんは歌手・松田聖子に提供した楽曲「瑠璃色の地球」を合唱するサイトを立ち上げ、自撮り動画による参加を呼び掛けています。

 ♪夜明けの来ない夜は無いさ…。

 心がふさいだり、ささくれ立った時こそ、歌の力でみんなに元気を。競馬に人を勇気づけるほどの力はないでしょうが、ステイホームのファンに少しぐらいは元気を届けられるかもしれない。映像でも伝わるサラブレッドの美しさとひたむきさ、そして、先週のヴィクトリアマイルで見せたアーモンドアイのような強さ。馬券を獲って懐の温かさも加われば、もっと元気になります。

 ♪くじけそうな時もあなたがそこにいたから…。

 そんな馬は今週のG1にも登場するのか。自宅のテーブルに広げた馬体写真をチェックしていると、アーモンドアイの次代を担う名牝が目に飛び込んできました。「大胆な戦法」(デアリングタクト)と命名された青鹿毛。その変身ぶりには少々驚かされました。

 桜花賞前にも称賛した張りに満ちた馬体が一段とパワーアップしています。腹周りもフックラしてきた。特に際立つのがトモ。尾の付け根が他の馬より上に付いているのに凄く格好良く映ります。トモの筋肉が尾の付け根の位置までせり上がっているからです。トモは馬のエンジン部。エンジンパワーがアップすれば大胆な戦法もとれます。前肢の張りも負けていない。なだらかに傾斜した肩、良く抜けた首にも筋肉をつけています。

 毛ヅヤはもっと変わりました。桜花賞時に残っていた冬毛が奇麗に抜けて、見違えるような光沢を放っています。アーモンドアイのような一時代を築く名牝はビッグタイトルを手にするたびに目覚めていくもの。デアリングタクトも桜花賞タイトルをつかんで目覚めたのか。新たな進化を遂げた姿です。

 松田聖子のヒットナンバー「チェリーブラッサム」(作詞・三浦徳子)のアップテンポな旋律が耳によみがえってきます。

 ♪なにもかも めざめてく 新しい私 走り出した…。

 “新しい私”に変身したのは馬体だけではありません。その顔つきにも驚かされました。桜花賞前には切羽詰まった心境を示すようにハの字に強く広げていた耳をゆったりと立てています。

 ♪心の岸辺に咲いた…。

 松田聖子の「赤いスイートピー」(作詞・松本隆)に倣うなら、心の岸辺に咲いた余裕という春の花。この心のゆとりが初の関東遠征で大きな力になる。2400メートル戦の緩い流れでも折り合いを可能にします。もとより背も腹下も長い中長距離体形。ステイホームを強いられる競馬ファンに元気を届けられる無敗2冠候補です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の76歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2020年5月19日のニュース