【朝日杯FS】アレグリア100点!バランス抜群「傑」

[ 2018年12月11日 05:30 ]

<朝日杯FS>牡馬より牡馬らしい馬体のグランアレグリア
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 2歳世代の頂点に立つのは女傑の「傑」か、偉丈夫の「偉」か。雌雄を決する時が来た。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第70回朝日杯FS(16日、阪神)ではサウジアラビアRCを圧勝した牝馬グランアレグリアと、重賞2連勝中の牡馬ファンタジストに満点を付けた。達眼が有力馬の立ち姿を漢字一字になぞらえながら解説する。

 その年の世相を漢字一字で表す「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会主催)が、漢字の日にあたるあす12日、京都の清水寺で発表されます。弾道ミサイルが北海道沖に落下するなど北朝鮮情勢が緊迫化した昨年は「北」。西日本豪雨や北海道胆振東部地震など災害が続いた今年は04年に続いて「災」か。スポーツ界は暴力、パワハラに揺れた一年でした。スポニチで猛威を振るう競馬予測人工知能(AI)は「暴」と予測しています。

 今年の“最強2歳馬”の呼び声高いグランアレグリアを漢字一字で表すなら…。その立ち姿が示すのは「静」。穏やかな目と耳をカメラマンに向けながら、悠然とハミを取っています。2歳牝馬とは思えない落ち着き。静かなる気品を漂わせるたたずまいです。その一方で、四肢は大地を力強くつかんでいる。指示があれば即座に動きだせる、「動」をイメージさせる立ち方です。いわば、「静の中の動」。舞踊や能、武道の境地にも通じる姿勢です。

 体つきは男勝り。クレジットなしの馬体写真を見れば、牡馬だと勘違いします。たくましい腹袋と首差し、分厚いうえにしなやかなトモの筋肉、トモのパワーを受ける飛節も強靱(きょうじん)。男勝りな部位がバランス良く滑らかにリンクしています。藤沢和調教師が阪神JFでなく朝日杯FSを選んだのもうなずける。ライバル候補の牡馬勢よりも牡馬らしい体です。傑出、女傑…他に抜きんでて優れている様を意味する「傑」がグランアレグリアに最もふさわしい。

 その女傑ぶりを人に例えれば、まず思い浮かぶのが「ミスター・女子プロレス」の異名を持つ神取忍の肉体。あるいは、政権を舌鋒(ぜっぽう)鋭くぶった切る「平成の女傑」田中真紀子さん。歴史上の女丈夫なら「尼将軍」と呼ばれた北条政子、昨年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の井伊直虎もこの女傑馬をイメージさせます。

 直虎を窮地に追いやった今川家の家臣みたいに難癖をつけるなら、後肢の蹄の形状が不ぞろい。左側が右側に比べて立ち気味です。ただ、負重が大きい前肢の蹄は寝ているので問題ないでしょう。キ甲(首と背の間の突起部分)はまだ抜けていません。成長途上。来年、つぼみが花開くように抜けていくのでしょう。

 つぼみの段階でも「傑」を印象づける2歳牝馬。末は博士か大臣か、あるいは日本競馬を背負って立つ名牝か。来年の漢字の日にはその姿をひと世代上のアーモンドアイと共に「超」の一字で表しているかもしれません。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の74歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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