【山陽・プレミアムC】“らしさ”全開の永井に注目

[ 2015年3月3日 05:30 ]

山陽オートレース場で行われるプレミアムカップ

 野球では一球の大事さ、恐ろしさを説く。オートレースは一般的に6周1分50秒の戦いだが、そこには一瞬の大事さ、怖さがある。

 つい最近のSGと言えば、2月に行われた全日本選抜(浜松)。一瞬が明暗を分けたのは2月10日の準決11Rだった。篠原睦がトップをひた走り、前回覇者でもある豪腕・浦田信輔がピタリとつける展開。ファンにすれば、浦田がいつ抜くか、いつ抜くか、と待ち遠しい心境だっただろう。ところが、伸びに勝る篠原が3周、4周…とまったく隙を見せない。

 本来、レーサーにとっての究極は決勝でどう勝つか。浦田は捲土重来を期し、ここは2着キープで良かった。ところが、悪魔は6周1コーナーに潜んでいた。浦田がわずかに外に振り、抜きに出る。待ってました!と窮屈な隙間に潜り込んだのが3番手・金子大輔だ。その一瞬の隙を見逃さなかった金子が優勝までたぐり寄せたのは、レースにおける一瞬の大事さを物語って余りある。

 さて山陽プレミアムカップ。一瞬のドラマはあるのか。ランク上位96人で争うこの大会は、メンバー的にSG以上ともいえる特別G1である。Sワン永井大介をはじめ、中村雅人、青山周平ら船橋勢に、先の全日選優勝の金子、そして浦田、荒尾聡、田中茂、篠原睦、高橋貢、木村武之ら強力な布陣だ。これらを浜野淳、前田淳、岩崎亮一、藤岡一樹、佐々木啓、岡部聡ら腕に覚えの地元・山陽勢が迎え撃つ。

 主役はやはり永井だ。浜松・全日選は準決で敗退したが、これは浜松が大の苦手という特別な事情があった。しかし、他場では“らしさ”全開だ。昨年は八面六臂(ろっぴ)の大活躍。SG2Vを含んで13回の優勝は自己最多、向かうところ敵無しの感があった。追いの迫力はともかく、ここ一番のS力が出色なのだ。ここ山陽は昨年G2で優勝。ここ3年の山陽成績も昨年暮れのG1を除けばすべて優出と実績は十分。そして、もうひとつ好材料。プレミアムCとは好相性でなんと5V。しかも昨年連続VでプレミアムC3連覇がかかるのだ。V候補ナンバーワン永井がV戦線をグイグイ引っ張る。

 対して浜野。地元走路では負けられない。先の全日選決勝は反妨に散ったが、Sの迫力は半端ではなかった。機力も充実。地元の2月一般戦は不順な走路で波に乗れなかったが、パワーの面でも不安はない。初代カイブツ君が熟年のワザと比類ないS力で、初日から一気に突っ走る。

 その他V候補が目白押し。話題で言えば金子。地元のSG制覇で乗りに乗る。山陽では13年若獅子杯でV。その後も優出ラッシュと得意な走路だ。若さに似合わぬ巧さは一級品。SGも1回の優勝ならフロックと言えるが、2回ともなると、その実力はもう本物だ。Vへぴたりと照準だ。そして、中村雅に浦田はビッグシリーズでははずせない候補常連。中村の強さは小首をかしげながら勝ち進むところだ。先の全日選も全開宣言は出ないまま優出。展開があったものの終わってみれば準優勝なのだから恐れ入る。安定そのものの中村がベスト8入りは間違いない。

 安定といえば、浦田も人後に落ちない。今年年頭、苦しみながらも地元飯塚の周年記念を制覇。この例に見るように、ここ一番の勝負強さは無類だ。その浦田には悔やんでも悔やみ切れない全日選準決勝だった。ここは一番、雪辱をかけて獲りにくる。

 その他、青山、木村武、荒尾、田中茂、地元陣は前田、岩崎、藤岡らも腕をぶす。興味は迷いの淵に沈んだ青山が昨年G1を獲った山陽でどう立て直すかということと、木村武の逆襲。そしてなにより当地2月、一般戦とはいえ、圧倒的な内容でV獲りの田中茂の動向だ。爆発力を秘める田中の復調が本物なら、V戦線かく乱は間違いない。勝負強い前田に、昨年G1獲りから殻破りの岩崎、全日選(3)の藤岡ら地元陣も優出圏内だ。ダークホースは新井恵匠、鈴木圭一郎の船橋勢。新井は昨年、当地若獅子杯を制覇。SGでも活躍の場を広げており、期待の1人。そして、超大物・鈴木圭は今年1級昇格を果たしたばかりでG1連続優出と底知れない可能性を秘める。波を起こすパワーに注目だ。

 プレミアムC優勝戦1~3着には暮れのスーパースター戦進出への得点が与えられる。この大会は栄光と実益を備えたまさしく特別G1なのである。
歴史に残る一瞬を見逃すな。

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2015年3月3日のニュース