【天皇賞・秋】まるでチーター!ヴェルデ、爪研いで瞬発力アップ

[ 2013年10月24日 06:00 ]

セイカプレスト(奥)と併せるヴェルデグリーン

 美浦ではオールカマーを9番人気で制したヴェルデグリーン。強さの秘密は爪に隠されていた。

【天皇賞・秋】

 ヴェルデグリーンが前後肢の筋肉を激しく伸縮させながら加速した。ウッドチップをかき込む前肢は後方へと強く反り返り、後肢は投げ出すように前へと伸びる。「チーターみたいな走り方だろう?こんな走りが息の長い瞬発力を生み出す一方で、蹄を傷める原因にもなる」。相沢師は併走するセイカプレスト(7歳オープン)に半馬身先着した走りを満足そうに見届けると、こう切り出した。

 チーターのように前肢を深い角度で曲げすぎるあまり、その蹄底(蹄の裏側)が後肢の蹄とぶつかってしまう。追い切りやレースでギャロップ(全力疾走)を繰り返すたびに傷み続ける前肢の蹄。500万で黒星を重ねた昨年は両前脚に「鉄橋鉄」と呼ばれる蹄保護用の特殊蹄鉄を着用し、調教も加減してきた。今年に入って傷んだ蹄が回復に向かったためノーマルの蹄鉄に戻した途端、500万、1000万、1600万と勝ち進んだ。

 だが、3連勝目で破綻が生じた。直線で右前肢の蹄が右後肢とぶつかり落鉄。「蹄の一部が裂けてボロボロになった」と師は振り返る。そこで新潟大賞典10着後、右前肢の大胆な削蹄に踏み切った。松崎装蹄師は「蹄の最も傷んだ部分(蹄壁)を思い切って削らせてもらった。短期間で生えそろうような削蹄ではなくリスクもあったが相沢先生に決断してもらった」と言う。

 4カ月後、9番人気で臨んだオールカマーで目の覚めるような大外強襲Vを披露した。「勝因は蹄の安定に尽きる。3角から忍者のように、いやチーターのように伸びた。中間、加減せずに調教を積めた。削蹄のおかげだ」。上げ潮ムードで挑む今回。追い切り後、笑みを浮かべて師はこう続けた。「ジェンティルドンナを差せるか、差せないか。勝負だ」

 蹄なくして、馬なし。故事そのままの蹄跡を描く今年最大の上がり馬。チーター走りが盾決戦の台風の目になる。

 ▼蹄鉄 蹄に装着するU字型の金属製馬具。人間で言えば陸上選手のシューズにあたる。かつては調教時に鉄や極軟鋼材の蹄鉄(約220グラム)を着け、レースでアルミニウム合金製(75グラム)に打ち替えていたが、現在は90%以上の競走馬が蹄の摩耗を防ぐため兼用蹄鉄(鉄頭部に鋼片を埋め込んだアルミニウム合金材=約95グラム)を着用。「鉄橋鉄」は傷んだ蹄を保護するため鉄板を真ん中に通した特殊蹄鉄で、G1・3勝馬マンハッタンカフェなどが着けていた。

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2013年10月24日のニュース