【岸本加世子 我が道22】高倉健さんとエレベーター2人きり あいさつされた後に意外な問いかけに戸惑い

[ 2025年11月23日 07:00 ]

「鉄道員(ぽっぽや)」で映画賞を総なめにした高倉健さん
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 1999年5月開催の第52回カンヌ国際映画祭からも招待された北野武監督の「菊次郎の夏」。生き別れた母を捜す少年と、行動を共にする不良中年男のひと夏を描いたロードムービーです。

 私はたけしさん演じる主人公の妻・美紀役で出演。「あんた一緒に行ってやんな」と、夫の尻を叩く世話好きな下町女性を演じました。

 この演技が評価されて翌年、日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を頂きました。同じ年、滝田洋二郎監督の「秘密」でも優秀助演女優賞に選ばれ、うれしいダブル受賞。賞を狙って演じるわけではありませんが、やっぱり励みになりますよね。

 アカデミー賞の授賞式でこんな忘れられない一コマがありました。会場は東京都港区の新高輪プリンスホテル。1人でエレベーターに乗り込み、ドアが閉まろうとした時に男の人がすーっと入ってきました。

 ドアが閉まってエレベーターの中には2人きり。乗り込んできたのが高倉健さんだと気づき、私は固まってしまいました。この年、健さんは降旗康男監督の「鉄道員(ぽっぽや)」で最優秀主演男優賞を受賞なさっていたのです。「鉄道員」は第117回直木賞を受賞した浅田次郎さんのベストセラー小説が原作で、北海道の廃線が決まった小さな駅の駅長が経験する不思議な出来事を詩情豊かに描いた作品でしたね。

 エレベーターの中で

 「高倉です」

 なんと健さんの方からごあいさつしてくださり、恐縮するやら驚くやらで

 「岸本加世子と申します」

 とお辞儀を返すと、健さんが

 「岸本さん、ひとつだけお伺いしてよろしいでしょうか?」

 と尋ねてこられた。

 「はい、なんでしょうか?」

 すると

 「どうしたら北野組に出られるんでしょうか?」

 健さんの意外な問いかけに戸惑った私は

 「北野監督にすぐにお伝えします」

 そう答えるのが精いっぱいでした。

 大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」(83年)や、健さんと共演した降旗監督の「夜叉」(85年)など俳優として存在感を示してきたたけしさんですが、監督デビュー後は「どうしたら出られるんですか?」と北野組に問い合わせが殺到していたそうです。

 健さんが北野映画への出演を希望していることは聞いたことがありました。「本当にそうなんだあ」と感激してさっそくたけしさんに伝えると「高倉健さんとか渡哲也さんが現場に来たら、おいら上がっちゃって監督なんてできないよ」と苦笑していました。

 北野組の高倉健さん、私は見てみたかったですけどね。

 ◇岸本 加世子(きしもと・かよこ)1960年(昭35)12月29日生まれ、静岡県島田市出身の64歳。77年、テレビドラマ「ムー」で女優デビュー。以降、テレビ、舞台、映画、CMなどで幅広く活躍。ドラマ「あ・うん」、舞台「雪まろげ」、北野武監督の映画「HANA―BI」「菊次郎の夏」など代表作多数。著書に小説「出てった女」、エッセー「一途」など。

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