合理的競技・将棋が舞台だから際立つ不条理「盤上の向日葵」

[ 2025年10月26日 15:15 ]

盤上の向日葵のワンシーンから(c)2025映画「盤上の向日葵」製作委員会
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 【映画コラム・CINEMA INFINITY】盤上の向日葵(10月31日公開)

 試写中、「不条理の対義語って何だろう?」と考えた。「不」を取って、では「条理」って何だ。筋道とか合理的とかになるようだ。

 山中で謎の白骨遺体が発見された。遺体は誰なのか。事件か事故か。解明の手がかりは、遺体と共に発見されたこの世に7組しかない希少な将棋駒。容疑をかけられたのは突如棋界に現れ、時の人となっていた棋士・上条桂介(坂口健太郎)だった。

 捜査の過程で上条の過去を知る人物として賭け将棋の裏社会で生きる真剣師・東明重慶(渡辺謙)が浮上する。上条と東明の間に何があったのか。そして謎に包まれた、上条の壮絶な生い立ちが明らかになっていく。

 「2人零和有限確定完全情報ゲーム」。将棋は運の要素が入り込む余地のないゲームとして知られる。大いに入り込むポーカーや麻雀と違い、将棋は同じ戦力が同じ配置で始まる。相手がこれまで指した手が全て把握でき、お互いの着手以外に勝敗を左右する要素はない。

 わずかに先手有利は数字上、判明しており、今年度公式戦で勝率55%近く。ただ、その先手後手も対局前の振り駒で決まる。リーグ戦では先手と後手の数が半々になるように定められている、極めて公平なゲームと言える。だから棋士は、人並み外れた頭脳の持ち主ぞろいにもかかわらず結果の前にはおしなべて冷静かつ謙虚、従順だ。

 合理的競技を舞台に物語が描かれることでなお際立つ不条理。2時間3分の上映後、最近流行の「長尺」でも良かったのでは?とも感じたがラストシーン、数多の感情が吹き上がってくる。(筒崎 嘉一)

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