ボクシング堤駿斗、尚弥超える“新MONSTER”へ 金メダルが絶対条件

[ 2019年12月17日 09:30 ]

2020 THE PERSON キーパーソンに聞く

東京五輪で男子フェザー級の金メダルを目指す堤駿斗
Photo By 提供写真

 男子8階級、女子5階級で実施されるボクシング競技で最もメダルが期待されている選手が男子フェザー級の堤駿斗(20=東洋大)だ。16年の世界ユース選手権で日本人初の優勝を果たした新鋭は、五輪予選の代表選考会を兼ねた11月の全日本選手権57キロ級で優勝、五輪への第一関門を突破した。2月のアジア・オセアニア予選(中国・武漢)で出場権獲得を目指す堤が意気込み、そして五輪後の 「未来予想図」を熱く語った。

 堤は東京五輪を21歳で迎える。年齢的には次のパリ大会も十分に狙えるが、五輪は今回だけと決めている。ボクシングを始めた時からの夢、プロで世界王者を目指すためだ。

 「自分が生きている間に東京で五輪があるなんて1度しかない。それを僕は大学3年という年齢、プロになることを考えても良いタイミングで迎えられる。出るしかない、出るからには金メダルを獲ろうと思っています。次の五輪?弟(麗斗=れいと)に託します」

 国際ボクシング連盟のガバナンスなどの問題で実施競技から除外される危機もあったが、心は折れなかった。

 「実施されることを前提に練習してました。仮に実施されなくても、それまでの過程は今後のボクシング人生に絶対のプラスになるから頑張ろうって」

 最終的に男子は10階級から8階級に減らされての実施が決定。日本はヘビー、スーパーヘビーを除く6階級で出場を目指すが、堤は本来のバンタム級(56キロ)はなく、フェザー級(57キロ)で戦うことを余儀なくされた。だが、それも前向きに受け止めている。

 「重くなる分には自分的にはいい。筋肉量を増やせるので本格的にウエートトレーニングも始めました」

 それまでは筋肉を大きくするメニューは避けていたが、以前よりも負荷を上げ、特に下半身を強化。その成果も実感できた。全日本選手権では1回戦から決勝まで全試合5―0の完勝。アジア・オセアニア予選、世界最終予選(5月、パリ)への出場権を獲得した。

 「力強さがついた。パンチの力強さが上がって、ガンガンくるファイターも止められるようになった」

 五輪に出場するためにはアジア・オセアニア予選で6位以内に入ることが条件。仮に逃しても世界最終予選があり、男子4階級に与えられる開催国枠での出場の可能性も残るが、照準をアジア・オセアニア予選に絞っている。

 「自分の階級はアジアに世界選手権のチャンピオンがいるので、その選手に勝てば、東京五輪にもつながると思う。勝って五輪出場を決めたい」

 小5で空手からボクシングに転向。高2の世界ユース選手権では日本人初の優勝を飾り、東京五輪への道が視界に広がった。海外の選手と対戦を重ねる中で身につけたのは試合中に相手の情報を得て対処するすべ。それはWBA&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(26=大橋)との出会いによって、さらに磨かれた。

 「尚弥さんとは今年に入って6、7回スパーをさせてもらったんですけど、毎回やられちゃうんです。考えて、いろいろ変えて挑んでみるけど、毎回対応されてしまう。自分の中で尚弥さんが“基準”になっているのは大きいです」

 東京五輪後の自身の「未来予想図」も完成している。

 「プロデビュー戦で世界ランカーとやって3戦目に世界挑戦。世界王者になったらトップランク社と契約して米国で試合をする。今、尚弥さんがいい感じで道を開いてくれているので、その波に乗って…最終的には尚弥さんより実力も知名度も上に行きたい」

 その夢を実現するために自身に課した“絶対条件”が、井上が出場できなかった五輪でのメダル獲得。

 「自分のできる全ての準備をして、自分の持っている力を全部出し切って、今までで一番強い自分を見せたい。そして金メダルを獲って支えてくれた人たちに恩返ししたい」

 東京五輪というゴール、そして、その先にある自分の夢に向かって突き進んでいく。

 《先輩たちも絶賛する“堤の強さ”》堤の強さについて東洋大の先輩でWBA世界ミドル級王者の村田諒太(帝拳)は「対応力」、習志野高の先輩でIBF世界スーパーバンタム級暫定王者の岩佐亮佑(セレス)は「修正力」と表現した。全日本選手権決勝をテレビ観戦した五輪金メダリストの村田は「途中からペースを取り戻したのは凄い」と褒め、数カ月前に堤とスパーリングをしたという岩佐は「自分に不利な状況、ペースを崩された時の修正がうまい。ラウンド中でも修正できる」と絶賛した。

 《弟・麗斗「24年パリ五輪に必ず出たい」》東京五輪を狙う堤駿斗に対し、24年パリ五輪を目指すのが弟の麗斗(17=千葉・習志野高2年)だ。既に高校3冠を獲得し、11月にはアジアユース選手権(モンゴル)で金メダル。兄弟でのアジアユース制覇は日本初で、「兄も高2の時にアジアを獲っていたのでよかった」と喜んだ。
 駿斗よりも6センチ低い1メートル65ながらガッチリした体格で、1つ上のライト級(60キロ)で戦う。国際大会は長身の相手ばかりでアジアユース準決勝では1メートル85の選手とも対戦した。だが、「兄より自信がある」というフィジカルの強さと踏み込みの速さで対抗。週1回は自宅へ戻る兄のアドバイスも受けながら、相手の動きを先に読み、フェイントを駆使して相手の懐へ入る戦い方に磨きをかけている。
 2020年のターゲットは、東京五輪後に予定されている世界ユース選手権。駿斗もかつて優勝しているだけに「絶対に金メダルを獲って、24年パリ五輪にも必ず出たい」と意気込んだ。兄と同じ金メダルロードを歩む。

 《麗斗、次世代トップアスリート応援プロジェクト選出》麗斗は10月、世界での活躍が期待される若手選手を明治安田生命が支援する「次世代トップアスリート 応援プロジェクト~めざせ世界大会~」の一人に選ばれた。同社が支援する次世代トップアスリートは兄・駿斗、陸上女子の村上夏美(早大)、フェンシング女子フルーレの東莉央(日体大)ら計10人。「東京五輪代表でもないのに支援していただけるのは当たり前のことじゃない。必ず恩返ししたい」と活躍を誓っている。

 ◆堤 駿斗(つつみ・はやと)1999年(平11)7月12日生まれ、千葉市出身の20歳。小5で空手からボクシングに転向。同じジムに那須川天心がおり、同時にキックボクシングも始めたが、中2からはボクシングに専念。習志野高ではフライ級、バンタム級で高校6冠を達成し、全日本選手権なども制覇。今年5月のコンスタンチン・コロトコフ記念国際トーナメントでは金メダル、大会MVPを獲得。身長1メートル71、右ボクサーファイター。

続きを表示

この記事のフォト

「ボクシング」特集記事

「WBSSバンタム級トーナメント決勝 井上尚弥VSノニト・ドネア」特集記事

2019年12月17日のニュース