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尚弥 試合中に両拳痛めるも…男気猛ラッシュでV2

[ 2016年5月9日 05:30 ]

<ダブル世界戦>10回、カルモナ(左)に左フックを見舞う井上尚弥

WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ ○王者・井上尚弥 判定3―0 同級1位ダビド・カルモナ●

(5月8日 有明コロシアム)
 WBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(23=大橋)がケガを抱えながら2度目の防衛に成功した。序盤に右拳を打撲して左1本での戦いを強いられ、さらに左も痛めた状態ながら最終回に指名挑戦者ダビド・カルモナ(24=メキシコ)からダウンを奪い、大差の3―0判定勝ち。世界戦での連続KO勝利は4試合でストップしたが、底力を見せつけてデビューから10連勝とした。

 このまま逃げ切りで試合を終わらせたくない。最終回、右も左も拳を痛めた状態で井上尚が倒しに出た。被弾もかまわず前へ出て猛ラッシュをかける。最後に右を打ち込むとカルモナがついに膝をついた。だが、起き上がった挑戦者を仕留めきれずに13年8月の日本タイトルマッチ(VS田口良一)以来、自身2度目の判定勝ち。「期待を見事に裏切ってすいません」。井上尚はリング上で謝罪したが、大橋秀行会長は「この状態で最後まで手を出したのはただものじゃない」とKOを諦めなかった姿勢に感心した。

 2回。相手頭部を打ったときに右拳に異常を感じた。「まだ(拳は)使える」と黙っていたが、父・真吾トレーナーが大橋会長に「倒しにいっていいですか」と宣言した5回の猛攻でもダウンを奪えず、陣営に打ち明けた。そこからは左1本での戦い。足を使って左フックに的を絞り、ボディーを狙うなど苦しい状況でさまざまな工夫をこらした。終盤にはその左も痛めたが「ポイントを取って勝とうと思えばできるけど、自分が納得できない。最後は痛くても見せ場をつくらないと」と王者のプライドでダウンを奪いにいった。

 調子は最高だった。2月の合宿で走り込んで下半身を強化し、スパーリングではパートナーが次々にダウン。昨年12月に結婚した咲弥夫人に食事面のサポートを受けてコンディションも万全だった。ただし、「全てが良すぎて、自信過剰になったかな」と真吾トレーナー。守備重視の相手を崩すのにも時間がかかり、井上尚も「いろいろな課題が出た」と反省を口にした。

 4月には米専門誌リングが、全階級を通じ最強のボクサーを決める「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」の9位に井上尚を選出。「どんどん世界にアピールしたい」と高みを目指す決意を口にしていた。次戦は前王者ナルバエス(アルゼンチン)との再戦が濃厚だが、来年にはPFP1位に君臨するWBC世界フライ級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)とのビッグマッチも見据える。幸い、拳のケガは長引くものではない。「課題が見つかったので次につながった」。意識の高い王者は、苦戦を必ず将来への糧にする。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川県座間市生まれの23歳。6歳の時、アマボクサーだった父・真吾氏の指導で競技を始める。新磯高(現相模原青陵高)時代にインターハイや全日本選手権優勝など7冠。12年10月にプロデビューし13年8月に国内最短タイのプロ4戦目で日本ライトフライ級王座、同年12月に東洋太平洋同級王座獲得。14年4月に日本人最速(当時)の6戦目でWBC世界同級王者。同年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し世界最速8戦目で2階級制覇。身長1メートル63.7、リーチ1メートル73.0の右ボクサーファイター。

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