【内田雅也の追球】「ナチュラル」を磨く。

[ 2025年9月18日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6―1広島 ( 2025年9月17日    マツダ )

<広・神>4回、右前打を放って雄叫びを上げる中川(撮影・北條 貴史)
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 試合開始前、国歌独唱のとき、雨脚が強まった。雷鳴がとどろき、稲光が走った。

 そんな光景に映画『ナチュラル』を思った。天才的な野球選手の波乱の人生を描く。少年時代、落雷にあった庭の大木でつくったバット、通称「ワンダーボーイ(神童)」を愛用する。稲光のマークを刻印していた。

 主人公ロイ・ハブスを演じたのが俳優ロバート・レッドフォードだった。訃報が伝わった。89歳だった。高校まで野球に打ち込んでおり、スイングも様になっていた。

 つらく苦い過去を持つロイは「オレの人生は思ったようにはならなかった」とつぶやく。幼なじみ、元恋人のアイリスが語る印象的なセリフがある。「人生には二つあるのよ。学ぶための人生と、その後に生きる人生が」

 野球は人生に似る。誰もが失敗や苦難を経験しながら歩む。「その後」にひらけることもある。

 リーグ優勝を飾った阪神の選手たちもつらく、苦しい思いを乗りこえて栄冠にたどりついた。

 佐藤輝明を今季初めてベンチから外したこの日、主に控えとしてチームを支えた面々がスタメンに名を連ねていた。猛烈な雷雨で試合開始は1時間以上遅れた。彼らにとっては貴重な出場機会が流れずにすんだ。

 遊撃を小幡竜平や熊谷敬宥と争った木浪聖也は三塁手で今季初の5番。6回表に左腕・床田寛樹の外角スライダーに食らいつき中前へ勝ち越し決勝の安打を放った。内角球をファウルで逃げた直後についていった。

 ベテランの原口文仁は1死一、三塁での代打だった。併殺は避けたい場面。内角球を詰まりながら遊ゴロを転がし、1点を加えた。ボテボテの殊勲打と書いておきたい。

 同じく代打で起用された楠本泰史は中堅左へ適時二塁打を放った。移籍後初の長打だった。次のステージに向けてのアピールとなった。

 若い中川勇斗はフルスイングが魅力だが、右前に巧打を見せ、無死一、二塁では三塁前へ絶妙なバントを決めた点をたたえたい。

 映画ではロイの父親の言葉がある。「おまえには才能がある。だが、それだけでは十分ではない。自分自身を磨くんだ。才能に頼りすぎると、失敗することになるぞ」

 教訓的だ。彼らは天から与えられた才能を磨いてきたのだ。映画の題名『ナチュラル』には「天性の才能」といった意味もある。 =敬称略=
 (編集委員)

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