【内田雅也の追球】紙一重で勝る「心」

[ 2025年9月1日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5―4巨人 ( 2025年8月31日    甲子園 )

<神・巨>3回、丸の打球を好捕する小野寺(撮影・須田 麻祐子)
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 いろんなことがあった。拙攻も拙守も拙走もあった。ただし、最後は阪神が逃げ切った。

 球際や紙一重の局面では優勝という大きな目標を目前にしているチームの強い心が勝る。この勝負の世界の常識である。集中力の違いか。下位のチームはどこかに心の隙が生まれるのだ。

 2点リードの9回表2死満塁。三ゴロを処理した佐藤輝明の二塁送球が乱れ、外野に抜けた。同点になると思ったが、巨人二塁走者は本塁を突かなかった。

 走者の速度が緩んでいたか。森下翔太のバックアップが素早く、強肩を恐れたのか。ならば、隠れた好守にあげたい。

 紙一重はラッキーセブンの逆転劇でも相次いだ。2点を追う7回裏、2死一塁から近本光司の39打席ぶり安打となる二塁打は左翼線ぎりぎりだった。中野拓夢の中前ライナーを前進守備の相手中堅手が突っ込んでそらし同点二塁打となった。

 この時、右翼から左翼への浜風はより強く吹いていた。続く森下が左翼上空に放った飛球は風に乗った。左翼手はフェンスに激突し、勝ち越し三塁打となった。さらに佐藤輝が右翼ポール際に打ち上げた高い高い飛球は風でファウル地域からフェア地域に戻された。右翼手は捕れず二塁打となり5点目が入った。佐藤輝はファウルとみたのか、悔しがり、最初は走り出していなかった。それほどの打球だった。

 阪神ファンだった作詞家・阿久悠が本紙に連載した小説『球臣蔵』で<野球は自然の中でやるのがいい。雨や風が神になったり、悪魔になったりするのがいい>と書いていた。この時の浜風は阪神にとって神風だった。

 なるほど、甲子園を味方につけていた。監督・藤川球児は逆転について「ファンの方と一緒に戦えた。大声援に押された」と話した。

 守り勝ちは確かだ。2回表無死二、三塁、中野は二塁ベース寄りに位置取りし、ライナー併殺を完成させた。3回表、先発起用の小野寺暖が左翼線ライナー性飛球を好捕した。7回表には1死一、三塁から右中間二塁打されたが、森下―中野―坂本誠志郎の好中継で一塁走者を本塁で刺した。

 1点差試合は22勝22敗の五分となり、逆転勝ち20度目で逆転負け21度に迫る。優勝にふさわしい成績になってきた。藤川は「最後は1点差で勝ちきる。まとまりがありますね」と笑っていた。 =敬称略=
 (編集委員)

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