【内田雅也の追球】神様が見ていた疾走

[ 2025年8月27日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3―2DeNA ( 2025年8月26日    横浜 )

<D・神>9回、間一髪アウトとなった近本(撮影・藤山 由理)
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 阪神・大山悠輔は本当によく打った。9回表2死からの逆転決勝2ラン。紛れもないヒーローである。ダイヤモンドを回る笑顔は光っていた。

 野球の神様は見ていたのだろう。普段から凡打でも疾走を怠らない姿勢に贈り物をくれたのだ――とみていた。

 試合後そんな話を外野守備兼走塁チーフコーチの筒井壮にすると「そうですよ」とうなずいた。「今日ちょうど、その話をミーティングでしたところでした。僕はね。努力した者が報われる社会であってほしいと思っているんです」

 そうだったのか。大山はもちろんだが、この日の各打者は凡打疾走の姿勢が目立っていた。

 DeNA先発のアンソニー・ケイはやはり難敵で7回まで1安打無得点に封じられた。その1本も投手の村上頌樹の弱いゴロが二遊間を抜けていったもの。つまり打者陣は無安打だった。目立ったのはゴロアウトで13個に上った。もともと「ゴロ・ピッチャー」だが、この夜は特に目立った。

 その凡ゴロでも皆、懸命に一塁を駆け抜けていた。たとえば近本光司は3回表2死一塁での二ゴロ、9回表先頭(投手は入江大生)での遊ゴロは間一髪だった。他にも5回表2死一塁での小幡竜平二ゴロ、7回表先頭の森下翔太二ゴロも間一髪だった。さらに書けば、2回表2死の高寺望夢は投ゴロで余裕でアウトの打球でも形相を変え、必死に走っていた。

 筒井は言う。「こうして勝っていてもケチをつけられたくないんです。“阪神は勝った。でも走っていないでしょ”といった声を聞きたくない。だから……」と選手たちに話したのだそうだ。なるほど、野村克也は「優勝というのは、優勝するにふさわしいチームがなる」と語っていた。

 「ウチの選手たちは少し言えば、すぐにやってくれます。それも無理をしているわけじゃなく、普通にできるんです」

 大リーグの『野球のメンタルトレーニング』(大修館書店)に<選手に必要な努力は自分をがんじがらめに縛りつけるような息の詰まるものであってはならない><努力するとか没頭するとかは強制的な義務ではない>とあった。

 つまり努力や没頭は日常的なものでなくてはならない。凡打疾走は阪神の日常なのだ。そうした日々の積み重ねで歓喜の時が近づいている。 =敬称略=
 (編集委員)

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