【内田雅也の追球】“響き合って”再出発

[ 2025年7月13日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5―2ヤクルト ( 2025年7月12日    甲子園 )

<神・ヤ>4回、先頭の中野が右前打で出塁(投手・石川)(撮影・岸 良祐)
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 首位を快走する阪神監督・藤川球児は今の好調さについて「響いてきましたね」と独特の表現で話していた。「自走し始めたと言いますか。選手たちが自分たちで走り出したでしょ」

 監督やコーチ陣の指示がなくとも、選手たち自身が動いて勝利に向かっているというわけだ。

 それにしても「響く」とはおもしろい。英語で人を意味するpersonの語源はラテン語personaで、基は動詞personoに行きつくそうだ。昔、娘の女子校入学式で校長先生が話していた。

 perは「~を通して」、sonoは「音」。personoは、あるものを通り抜けて響き合うという意味となる。つまり、人と人は交わり、響き合うものなのだ。

 この夜は大型連勝が止まった翌日、大事な一戦。藤川は「チームとして揺れ動きがあった」と先取点を許した。それでも選手たちは響き合って再出発の勝利を手にした。

 たとえば、4回裏の逆転劇だ。2点を先取された直後の攻撃。四球をはさんで単打4本を連ねて3点を奪い、45歳のベテラン、石川雅規を降板に追い込んだ。特に作戦、攻撃のサインなどなかった。選手自身が考え、1巡目は抑えられた軟投左腕を攻略してみせた。

 先頭の中野拓夢の右前打。けん制を4球もらう揺さぶりで森下翔太は四球でつないだ。佐藤輝明の右前打も中野同様シャープに振り一、二塁間を抜いた。無死満塁、大山悠輔の右前ポテン打で二塁から還った森下翔太は好走塁だった。さらに小幡竜平が一、二塁間をゴロで抜いて勝ち越した。

 この回拙い走塁で憤死した豊田寛に代わり途中出場した島田海吏は大飛球好捕に安打も放った。8回裏の追加点も2死無走者から四球に連続長打と作戦無用だった。

 作家・五木寛之が「音と音が共鳴しあい、新しい音が生まれる。そういうことが人間対人間、思想対思想の中にもあって――」と語っている。プラトンの『饗宴(きょうえん)』に出てくる「ハーモニー」の意味だそうだ。『生き方入門』(致知出版社)の稲盛和夫との対談にあった。

 84試合目で50勝に達した。勝率6割1分は87勝ペースだ。監督と選手、そして選手同士が響き合い、チーム力が高まっていた。 =敬称略=
 (編集委員)

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