【内田雅也の追球】反省しても後悔はせず

[ 2025年6月23日 08:00 ]

交流戦   阪神1―3ソフトバンク ( 2025年6月22日    甲子園 )

<神・ソ>7回、坂本がバント。三走・熊谷は動けず、一走・高寺を進める捕前犠打に(撮影・北條 貴史)
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 痛恨の7回裏の逸機は1死一、三塁が焦点だった。1点差。相手内野陣は前進。打者は坂本誠志郎。三塁走者に代走・熊谷敬宥で勝負に出た。

 結果を先に書くと、3ボール―0ストライクからセーフティースクイズを仕掛けたが、打球は捕手前で転がらず、熊谷は本塁を突けなかった。

 監督・藤川球児は「作戦ですので」と内情は語らなかったが、恐らく初球からセーフティースクイズで通したのではないか。坂本は投球動作に入ると、4球ともバントの構えをしていた。

 初球はピッチアウトされ、坂本はバットを引いた。2球目。外角速球にバットを引き、熊谷はスタートを切りかけ、捕手からの送球に帰塁した。

 3球目は外角球(カッターか)がワンバウンドし、バットを引いた。

 カウント3―0。結果は先に書いたようにセーフティースクイズ続行で失敗したわけだが、むろん他にも策はあった。

 一つは「打て」。打者絶対有利のカウントで打たせる。坂本は26試合連続出塁と打撃好調だった。三塁走者に「当たりゴー」などギャンブルスタートさせる手もあった。もちろん「待て」で様子を見る手もあった。

 もう一つは三塁走者スタートの普通のスクイズがある。3―0からストライクを取りに来ると読めば、この手があった。

 ただしスーサイド(自殺)スクイズと呼ばれるように、ピッチアウトや悪球で三走憤死の危険が伴う。セーフティースクイズはバント失敗の保険をかけた作戦と言える。

 坂本は自身のバントが拙かったと言った。2球目に一塁手・中村晃が一塁ベースを早く離れ、相当なチャージをかけていた。この残像で狙いのはずの一塁側を狙い切れなかったのかもしれない。

 決断した藤川は「作戦的に課題と言いますか」と反省を口にしたが「後悔は何もないですね」。

 「反省がなければ、成長はない」と野村克也は語っていた。<「決断」とは賭けである。何に賭けるか根拠が求められる。また決断する以上、責任は自分で取るという度量の広さをもたなくてはならない>と『野村ノート』(小学館)に記していた。だが数多い野村語録に「後悔」の言葉は見当たらない。

 1年生指揮官は反省を胸に、責任を背負って決断したのだろう。野村語録には「失敗と書いて成長と読む」とあった。 =敬称略=
 (編集委員)

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