【選抜100年 世紀の記憶】「もし万全だったら危なかった」 大阪桐蔭・西谷監督が語る花巻東・大谷
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「選抜100年 世紀の記憶」第6回は大谷翔平選手(29=ドジャース)の選抜を振り返る。昨年12月に10年総額7億ドル(決定時約1015億円)というスポーツ界史上最高額で移籍し、今や世界トッププレーヤーだが、花巻東(岩手)時代に夏1度、春1度出場した甲子園では未勝利に終わった。全国舞台で初めて「4番・投手」として出場した2012年84回大会1回戦では大阪桐蔭(大阪)に2―9と完敗。投げ合った大阪桐蔭・藤浪晋太郎投手(29=メッツ)と西谷浩一監督(54)の回想をもとに、未完だった当時の大谷に迫る。(惟任 貴信)
西谷監督は記憶の糸をたぐり寄せつつ、12年前に思いをはせた。
「あの試合は前年秋に投げていなかった大谷君のデータが無くてね…。夏に投げている映像は少しありましたが、困ったのを一番、覚えています。ただ選抜前に(練習試合が)3~4試合あって、龍谷大平安(京都)、東大阪大柏原(大阪)などと対戦したと思いますけど、全然、打てていなかったんです。三塁…いや二塁すら踏ませてもらえない。投手としては誰に聞いても“すごい”と言う。そして打撃も“すごい”と…。もう、どうしたらいいんや、と思いましたね」
そうして迎えた試合前。ベンチから相手ブルペンに熱視線を送っていた西谷監督は、あることに気づいた。
「(大会前の)実戦では3~4イニングしか投げていないという情報があり、試合前も相手のブルペンを見たら10球くらいしか投げなかった。室内で投げてきたのかも…とも思いましたが、10球くらい投げたらノックの補助に回ったんですよ。それを見て(まだ球数は)投げられないのかなと。だから暗示をかける意味でも、選手たちには“ケガもあって冬場に練習ができていないから、球数を投げさせたら絶対に勝てる”と伝えていました」
ナインを鼓舞し、いざプレーボール。やはり予想通りの好投手だった。ただ、試合は西谷監督の想定通りの展開となった。
「初回、完璧に捉えた森(友哉)がベンチに帰ってきた時に聞いたら、“大したことないです”。いやいや、大したことあるやろと(笑い)。2番の大西(友也)はバントもさせてもらえなかった。“どうや?”と聞いたら、“エグい球です”と。ただ絶対にもたないと思っていました。だからボクシングで言うボディーを打て、と指示して“落ちてきたら教えてくれ”と言ったら、4回くらいに二ゴロを打った白水(健太)が“落ちてきました”と。“打ってから言えよ”と笑いましたが、明らかに落ちてきていて、スライダーでカウントを稼ぎに来ていた。それでスライダー狙いに絞って攻略できたんです」
終わってみれば、9得点の快勝劇。大谷から放った安打数は7ながら、制球難を突いて11四死球を取り、完勝を飾った。だが…大谷が万全なら「危なかった」という。
「大谷君は故障があったから冬場に投げ込みなどができず、準備ができていなかった。だから、われわれとしては、そこを突いていくしかなかった。試合前半は本当に良かったですよ。ただ後半になるにつれてね。オープン戦で(イニングを)投げられていなかったので、スタミナがない中、ぶっつけで行くしか方法がなかったんだと思います。だから試合前のブルペンでも、あれくらいしか投げなかった。監督さんの立場としては(球数を)投げさせることができなかったんでしょう。逆の立場なら、僕もそうだったと思います。あの試合の大谷君は故障明けだったから、つけ入る隙があった。もし万全だったら、危なかったでしょうね」
高校時代の「投手・大谷」とは、どのレベルにいたのか。あまたの好投手を攻略してきた西谷監督は続けた。
「(選抜時点の完成度は)2~3割くらいではないかと見ていました。ケガもありましたし、春の選抜でしたしね。藤浪(晋太郎)もそうでしたけど、まだまだ高校生だったので。ただ、その夏に160キロを出したと聞いて、改めて“凄いな”と思いましたね。僕は横浜(神奈川)の松坂投手とは対戦したことはないのですが、高校の時点だけで比べるなら、松坂投手の方が全然上だと思います。投手としてならですよ。どちらもすごいレベルなんですけど。東北(宮城)のダルビッシュ君もすごかったですし…もちろん、大谷君は甲子園で対戦した中でも、何本の指に入るかという投手だったことは間違いないです」
言うまでもなく、当時から打者としても非凡なセンスを有していた大谷。とはいえ、名将の眼力をもってしても、「打者・大谷」のここまでの活躍は想像できなかったという。
「投手としてだけでなく、打撃も良かったですね。良かったですけど、ここまでになるとは…。ここまでの活躍は、誰も想像できなかったでしょう。(12年夏の甲子園大会終了後のU18)ジャパンの練習(見学)で、森と大谷君が並んで打撃をするのを見ながら“大谷、やっぱり打撃がええな”と思いつつ“でも森の方がいいんちゃうかな”と思ったのを覚えています。高校時点では同じくらいかな…と。もちろん、森もすごいんですけどね。でも何回も言いますけど、ここまでは誰も想像できませんよ。いいのは分かっていましたけど。これはもう彼の努力しかないでしょうね」
そして今。大リーグのトッププレーヤーになった大谷の活躍には脱帽するしかない。
「(当時の時点で今の活躍は)正直、想像できなかったですね。良かったですよ?でもメジャーで2度もMVPを獲って、本塁打王を獲るなんて、そこまでは想像できませんでした。日本人で本塁打王…まだサイ・ヤング賞なら日本人にも可能性があるかもしれないと思っていましたし、イチロー選手の首位打者も、あの技術ならと思いましたけど、本塁打王ですからね。パワーはね…凄いのひと言です」
高校野球随一の名将は一気に言葉を連ね、そして目を細めた。
◇西谷 浩一(にしたに・こういち)1969年(昭44)9月12日生まれ、兵庫県宝塚市出身の54歳。報徳学園(兵庫)では甲子園出場なし。関大で主将を務める。93年から大阪桐蔭でコーチを務め、98年秋に監督就任。08年夏に甲子園大会で優勝を果たし、12、18年には春夏連覇。歴代2位の甲子園通算67勝(13敗)、同1位の計8度の優勝。
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