結成3年カーママの急成長支えた3要素 

[ 2013年12月17日 05:30 ]

公共施設としては全国初の通年型カーリング場のどうぎんカーリングスタジアム

カーリング ソチ五輪世界最終予選最終日プレーオフ第2戦 日本10―4ノルウェー

(12月15日 ドイツ・フュッセン)
 ソチ五輪代表切符を勝ち取った北海道銀行は10年11月に小笠原と船山を迎えて新チームを結成してから急成長。日本女子5大会連続五輪出場をつかみとる原動力となった3つの要因を探った。

 (1)通年型カーリング専用リンクの完成 見逃せないのが練習施設だ。12年9月に通年型リンクのどうぎんカーリングスタジアムが完成した。同施設は総事業費17億5000万円で、札幌市豊平区月寒東につくられた。育児と両立する小笠原、船山にはそれまでは練習場がなく、妹背牛町まで約2時間をかけて吹雪の中を移動したこともあったが、本格的な施設完成で負担が激減。練習量は格段に増え、競技力向上につながった。小笠原は「ずっと札幌に専用リンクがあればと思っていた。人生を懸けて(カーリングを)普及したい」と気持ちを新たにしていた。練習に集中する環境が整ったことがブランクを感じさせないプレーにつながり、船山は「環境が整わずに夢を断たれる選手がたくさんいたので」と感謝した。

 (2)個人スキルの向上 今年7月に北海道の女子カーリングの強化、育成を目的とした「北海道女子カーリングアカデミー」が開校した。日本スポーツ振興センターからの再委託事業で北海道が受託し、3年間かけて育成を行い、18年の平(ピョン)昌(チャン)五輪でのメダル獲得が目標。コーチには07年にカナダ代表を世界ジュニア優勝に導いたジェームス・ダグラス・リンド氏が就任し、チーム練習とは別に個人レッスンを行って技術向上を図っている。北海道銀行も同アカデミーを利用してトレーニングを積む。北海道銀行も選手が個別に参加。小笠原は「アカデミーで練習していて午前が(船山と)母2人で、午後が(小野寺ら)若者」と説明。時間を分けることで効率良く個人能力アップを目指し、今回の最終予選に向けて強化を図った。船山は「環境を整えてくれた人たちに感謝したい」と振り返る。同コーチは、今回の最終予選に同行し、選手を支えた。

 (3)コミュニケーションの向上 今回の最終予選に向けてチームとしてのまとまりが格段に上がった。その背景にあるのが11月のカナダ遠征だ。司令塔の小笠原は人目をはばからず、勝利のために厳しい言葉を若手2人に投げかけてきたが、35歳のカーママコンビに対して若手の小野寺と吉田は22歳と世代間でギャップがあった。しかし、9月の代表選考会で勝ち抜き、チームとして初の日本代表になったことでチーム全員に責任と自覚が芽生え、1カ月に及ぶカナダ遠征で選手が積極交流。船山は「同じ家で生活をして、氷上以外のところでコミュニケーションが取れたのは凄く大きい」という意思疎通の改善を指摘する。今回の予選では、プレー中に全選手が意見を交わす場面がたびたび見られ、出場権獲得後は小笠原が、控え選手の役割となるフィフスの吉田をすぐに手招きして全員で喜びを分かち合った。遠征でコミュニケーションを深めたことが結束力強化に役立った。

 ▼カーリングのルール ハックと呼ばれる蹴り台から約40メートル先のハウス(円)を狙って約20キロのストーンを投げて得点を争う競技。1チーム各4人。10エンドで実施し、各エンドは1人2投ずつ両チームが交互に1投ずつ投げて、両チームが全て投げ終わった時点でハウス内のティー(中心)に最も近いストーンを投げたチームが得点を得る。このとき相手のティーに最も近いストーンよりも内側にある全てが得点となり、相手は0点となる。各エンドに先攻と後攻があり、第1エンドはコイントスなどで決め、第2エンド以降は前のエンドで得点したチームが先攻になる。両チーム0点なら前のエンドと同じ先攻、後攻で行う。

 ▽北海道銀行フォルティウス 10年11月に小笠原、船山が復帰宣言し、吉田とともにチームをつくることを発表。11年4月に小野寺が加入し、チームが結成される。同年11月に岩手県出身の苫米地が加入。チーム名のフォルティウスは小笠原、船山が青森時代に一時使用したチームの名前で、ラテン語で「より強く」を意味する。12年日本選手権4位、13年日本選手権2位。

 ◆小笠原 歩(おがさわら・あゆみ)旧姓の小野寺で02年、06年五輪に出場し「カーリング娘」の中心として活躍。06年に第一線を退いたが、結婚、出産を経て10年に復帰。札幌学院大出。1メートル55、49キロ。35歳。北海道出身。

 ◆船山 弓枝(ふなやま・ゆみえ)旧姓林。小笠原とともに02年、06年五輪に出場し、同じく結婚、出産を経て復帰。札幌大谷短大出。1メートル53、46キロ。35歳。北海道出身。

 ◆小野寺 佳歩(おのでら・かほ)陸上の七種競技でも全国高校総体に出場。北海道・常呂高出、中京大在学中。1メートル64、57キロ。22歳。北海道出身。

 ◆苫米地 美智子(とまべち・みちこ)チーム岩手のスキップとして活躍後、北海道銀行に加入。岩手・福岡高出。1メートル50、47キロ。33歳。岩手県出身。

 ◆吉田 知那美(よしだ・ちなみ)06年日本選手権で北海道・常呂中のスキップとして小笠原のチーム青森を破った。北海道・網走南ケ丘高出。1メートル57、53キロ。22歳。北海道出身。

続きを表示

この記事のフォト

2013年12月17日のニュース