世界歴代6位!町田ぶっちぎりでSP首位発進

[ 2013年10月20日 06:00 ]

男子SPでトップに立った町田樹

GPシリーズ第1戦スケートアメリカ第1日

(10月18日 米ミシガン州デトロイト)
 もう伏兵とは呼ばせない。男子ショートプログラム(SP)が行われ、町田樹(たつき、23=関大)が世界歴代6位のハイスコアとなる91・18点をマークし、首位に立った。昨季の中国杯でGP初勝利を挙げた23歳が、4―3回転のコンビネーションを決めるなど完璧な演技を披露。77・09点で5位だった10年世界選手権金メダリスト・高橋大輔(27=関大大学院)、77・75点で4位の11年同選手権銀メダリスト・小塚崇彦(24=トヨタ自動車)に大差をつけた。

 左手を突き上げてフィニッシュすると、右の拳を力強く握りしめた。自己ベストを一気に7・70点更新した町田がSP断然首位。「幸せな3分間を過ごせた」。4―3回転を完璧に決め、表現力が問われる5項目の演技点でも高橋に匹敵するスコア。ファンも入場可能な会場内のレストランで行われた異例の会見で、大きな拍手を浴びた。

 今季SPは米国のノーベル賞作家スタインベックの名作「エデンの東」のテレビドラマ版の曲だ。昨季演じるはずだったが、原作を読み込めていないことから断念。1年以上の構想を経て、勝負のソチ五輪シーズンに投入したとっておきのプログラムには、特別な思いがある。3歳でスケートを始めて20年。「五輪シーズンで20周年の年にやるのがふさわしいと思った」と意図を明かした。

 「エデンの東」はジェームズ・ディーンの映画が有名だが、町田は見ない。「エデンの東=ジェームズ・ディーンという色眼鏡を外していただき、僕のエデンの東を見てもらいたい」。趣味は読書で哲学にも興味があり、愛読書はヘーゲルの「美学講義」。異色スケーターの今季テーマは、超難解だ。「エデンの東」のコンセプトというヘブライ語の「ティムシェル」。町田は「“汝(なんじ)、治むること能(あた)う”ですよ。簡単に言うと、自分の運命は自分で切り開くということ」と得意げに説明した。

 昨季の中国杯でGPシリーズを初めて制した23歳が、世界選手権メダリストの高橋、小塚にSPで大差をつけた。ハイレベルなソチ五輪代表争い。19日(日本時間20日)のフリーで逃げ切れば、伏兵から主役候補に躍り出る。「日本人はたくさん有名な選手がいて、僕が一番(五輪に)遠い存在。しっかりアピールして、狭き3枠の1つを必ず手に入れるんだという強い気持ちでやっている」。夢舞台への険しい道のりを、自らの力で切り開こうとしている。

 ◆町田 樹(まちだ・たつき)1990年(平2)3月9日、神奈川県川崎市出身の23歳。3歳でスケートを始め岡山・倉敷翠松高から関大に進学。09―10年シーズンからシニアに参戦し、昨年11月の中国杯でGPシリーズ初優勝。GPファイナルは最下位の6位。大きな木のように育ってほしいという両親の思いから、「樹」という名前が付けられた。1メートル62、53キロ。

続きを表示

2013年10月20日のニュース