井戸木 シニアメジャーでアジア勢初V 国内2勝も初渡米で快挙

[ 2013年5月28日 06:00 ]

通算11アンダーで優勝した井戸木鴻樹

第74回全米プロシニア選手権最終日

(米ミズーリ州セントルイス ベルリーブCC=6959ヤード、パー71)
 無印の男が日本男子初のメジャー制覇だ。51歳の井戸木 鴻樹(小野東洋GC)が65で回って通算11アンダーとし、シニアのメジャー大会をアジア選手として初めて制した。5打差の5位から6バーディー、ノーボギーで逆転。レギュラーツアーの男女を合わせて日本選手のメジャー大会制覇は77年全米女子プロの樋口久子以来で2人目。国内レギュラーツアーはわずか2勝ながら、米シニア通算9勝の青木功も届かなかった偉業を達成した。

 日本人が何十年もはね返されたメジャーの壁。初制覇の偉業をやってのけたのは青木でも中嶋でもなかった。国内レギュラーツアーわずか2勝。優勝インタビューを受けたのは日本でも目立つことの少なかった井戸木だ。渡米経験を問われると「ファーストタイム」と慣れない英語で苦笑い。「頭の中が真っ白。凄いことをやっちゃった」と目を丸くした。

 首位と5打差5位から出て次々と長いパットを決めた。3番のバーディーパット、10番のパーパットはともに約10メートル。17番では8メートルを決めて6つ目のバーディーを奪い、米ツアー通算14勝のペリーを振り切った。アーノルド・ パーマー、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラウスら伝説の選手が歴代優勝者に名を連ね、シニア随一の歴史を誇る大会。初出場の51歳が制したとあってはAP通信も「ミステリーマン(謎の男)」と表現するしかなかった。

 1メートル67と小柄。平均飛距離は250~260ヤードで女子のトップよりも飛ばない。トム・ワトソンと回った3日目も「ドライバーで40ヤードぐらい置いていかれる」と話していた。しかし、日本ツアーで01年から09年の間にフェアウエーキープ率で5度、1位となったショットの精度の高さで勝負した。4日間のパット数は最少の108。これまでは長尺パターを使っていたが、中尺を使用。「引っかくような癖」を克服し、パットで「開眼した」という。小技がさえ「自分のゴルフを貫いた」と胸を張った。

 レギュラーツアーでは4度シード復帰した不 屈の男。近年は故障にも苦しんだが、5年前からジム通いを始め、シーズン中も腹筋、背筋など筋力トレーニングを欠かさない。自宅周りを走るのも日課だ。大好きだったビールも控え、毎朝血圧も測って体調管理に努める。一昨年、11月に50歳になると同年末にシニアデビュー。昨年、国内最終戦の富士フイルムシニアで初優勝した。これまでは「来ても通用しない」米国を避けてきたが、今回は尾崎直道に誘われて初参戦。「小さな体でもうまくいけば通用することを感じてもらえたら幸せ」。非力でも戦えることを証明した。

 帰国後は「ISPS・HANDA CUP」(31日開幕、八幡C)に凱旋出場。その後もシニアツアーに臨むが、今回の勝利でレギュラーツアーのメジャー、全米プロの出場権も手にした。1年前から新聞を読む時には老眼鏡をかけるようになった。向上心は若い時と同じ。「レギュラーツアーに戻ってみたいと前から思っていた。でも、米国でやってみたい気持ちもある」。日本のゴルフ史に名を残した中年の星。夢はぐっと広がった。

 ◆井戸木 鴻樹(いどき・こうき)1961年(昭36)11月2日、大阪府生まれの51歳。茨木市立豊川中卒。10歳でゴルフを始める。82年にプロとなり、90年関西プロ選手権でツアー初優勝。93年にはNST新潟オープンを制し2勝目を挙げた。レギュラーツアーの賞金シードを15度獲得。日本のシニアツアー1勝。1メートル67、62キロ。  

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