鏡桜が新十両 苦節10年、所属力士2人の部屋から関取

[ 2012年11月29日 06:00 ]

新十両が決定、師匠の鏡山親方(左)と握手する鏡桜

 日本相撲協会は28日、福岡市内で初場所(来年1月13日初日、両国国技館)の番付編成会議を開き、十両昇進力士3人を決め、発表した。新十両2人はともにモンゴル出身の鏡桜(かがみおう、24=鏡山部屋)と東龍(25=玉ノ井部屋)。現師匠の鏡山親方(元関脇・多賀竜)が96年12月に部屋を継承してから初の新十両となった鏡桜は、部屋に所属力士が2人という厳しい環境の中で出世を果たした。再十両もモンゴル出身の城ノ龍(29=境川部屋)だった。

 苦節10年で目標だった関取昇進が現実となっても、祝福してくれる兄弟弟子は1人。それでも鏡桜は、感慨深げに相好を崩した。「親方がいなかったら自分もいない。力士は2人ですが(三段目の)竜勢には場所中もぶつかり稽古で胸を出してもらった。感謝しています」。師匠の鏡山親方さえも「劣悪な環境」と自虐的に説明する中でひるまずに地道に稽古を積み重ね、自己最高位の西幕下4枚目だった九州場所で4勝3敗と勝ち越し。外国出身力士で史上6番目に遅い初土俵から所要56場所で新十両昇進を果たした。

 モンゴル出身力士のパイオニアで元小結の旭鷲山に憧れ、03年名古屋場所に15歳で入門。師匠によると当時は5人ほどの力士が所属していたが、年々数が減って現在は師匠の長男である竜勢と2人きりとなった。年3回の東京場所前は基本的に部屋(東京都葛飾区)近隣にある中村部屋に出稽古し、九州場所では同じ福岡県糟屋郡志免町に宿舎を置く時津風部屋に連日出向いた。

 96年に継承して初の関取誕生に、師匠も「俺が弟子を集めることができればいいんだけど…。少ない人数の中で一生懸命頑張ってくれた」と申し訳なさそうに祝福した。

 通常は関取になれば個室が与えられるが、鏡桜は現在3階にある約30畳の大部屋を1人で独占。2階に関取用の個室があるが、本人は「竜勢は1階にある部屋で寝ている。とりあえずは動くことはないと思う」と説明する。付け人についても師匠は「どこかの部屋に助けてもらうしかない」と嘆く。相撲協会広報部も「記憶にない」という力士2人という部屋からの異例の出世だが「竜勢と来年も2人で頑張ろうと言い合った」と決意も新た。名横綱・柏戸が礎を築いた部屋の灯は絶対に消さない。

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2012年11月29日のニュース