康生新監督 再興へ異種格闘トレ「積極的に取り入れるべき」

[ 2012年11月29日 06:00 ]

公開練習で指導する井上康生新監督(左)

 ニッポン柔道再興へ、世界の格闘技のノウハウを総結集する。30日に東京・国立代々木競技場で開幕する柔道のグランドスラム東京大会に向けた男女の調整合宿が28日、東京・文京区の講道館で公開された。就任後初のビッグイベントを前に、全日本男子の井上康生新監督(34)は今後の強化プランの一部を披露。サンボやブラジリアン柔術など世界各国の格闘技を積極的に吸収し、ニュースタイルをつくり上げることを誓った。

 新監督の口調は、どんどん熱を帯びていった。就任会見で「いいものはどんどん取り入れる」と約束した井上監督は、他の格闘技とのコラボレーションについて問われるとせきを切ったように話し始めた。「非常に興味があります。自分も英国留学中にブラジリアン柔術の選手と実際にやってみたけど、関節の取り方など非常に参考になった」とし「まずはコーチが勉強して、積極的に取り入れるべきだと思う」と口調を強めた。

 ロンドン五輪金メダルゼロというどん底からの再興。この日は「プレッシャーはある」と苦笑いしたが、前日27日のコーチ会議は3時間30分を超えたという。生まれたアイデアの一つは、世界の格闘技を学ぶこと。「良い柔道を世界に披露するのも日本柔道の仕事。しかし、各国の格闘技が取り入れられたものがつくり上げられてるのも今の柔道」と分析を披露。「モンゴル相撲の体幹の強さ、サンボやチタオバの組み手は非常に参考になる。組ませてくれないから投げられない、では勝てない」と続けた。

 斉藤仁強化委員長は「きれいに投げての一本が難しい時代だから、寝技は強化するポイント。それにはサンボやブラジリアン柔術は参考になるし、大いに結構」と後押しする。重量級担当の鈴木桂治コーチも「自分も現役の時はレスリングの練習に参加したし、体の使い方とか学ぶべき点は多いはず」と話す。実際に、ロンドン五輪で男子最多の3階級を制したロシアにはサンボ出身者も多く、柔道場とサンボ教室を兼ねているケースもあるという。「まずはどの階級も、どれだけ戦う集団にしていけるかだと思う」と決意をにじませた井上監督。敵を知り、己を知らば、百戦危うからず――となるか注目だ。

 【名前が挙がった格闘技】

 ▼ブラジリアン柔術(ブラジル)投げても一本とはならず、柔道では禁止の寝技への引き込みが可能。関節をきめると一本となる。

 ▼サンボ(ロシア)旧ソ連軍の護身術。上半身は柔道着に近いウエアを着用し、レスリングマット上でシューズを履く。

 ▼チタオバ(グルジア)袖無しの上着を着用し、背中越しにつかみ合って投げる技が多数存在。砂の上で行われるケースも。

 ▼モンゴル相撲(モンゴル)ブフと呼ばれ、足の裏以外が地面に着くと負け。スペースが限られていないため、投げ技や足技が中心。

 ▼レスリング(欧州)つかむことができないシングレットを着用するため、相手の重心を崩す動きが重要となる。

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2012年11月29日のニュース