上原 亡き父にささげる2年ぶり逆転V!

[ 2011年7月4日 06:00 ]

<日医工女子オープン>優勝インタビューで涙を見せる上原彩子

女子ゴルフツアー日医工女子オープン最終日

(7月3日 富山県富山市・八尾カントリークラブ=6476ヤード、パー72)
 プロ8年目の上原彩子(27=モスフードサービス)が天国の父に優勝をささげた。1打差の2位から出て、ツアー史上初となる2日連続の5連続バーディーなどで前半にツアータイ記録の29をマーク。後半に1つスコアを落としたものの66で回り、通算16アンダーの200で、09年ヨコハマタイヤPRGRレディース以来2年ぶりのツアー3勝目を挙げた。父・美代志さん(享年69)の死去後、待望の初優勝となった。
【最終R成績】

 1メートル先にあるカップにボールが沈んだ瞬間が合図だった。サングラスを外した上原の目からあふれる涙。父・美代志さんの墓前に初めてささげる優勝に「久しぶりなので、こんなに気持ちいいものなんだなとあらためて感じました。泣かないかと思ったけれど、やっぱり来ましたね」と頬をぬぐった。

 新境地を開いた。バーディー発進すると2番では2メートル、3番では7メートルを決めた。4番でもスコアを伸ばして単独首位に躍り出ると、5番では4メートルをねじ込んだ。前日の9~13番に続く、2日連続の5連続バーディーはツアー初の快挙。7、9番でもスコアを伸ばし、ハーフでの29はツアータイ記録となった。終盤は1打差に迫られたが、前半の貯金で逃げ切り。「粘り合いが向いていると思ったけれど、バーディー合戦でも勝てるようになったんですね」。本人も驚く変身ぶりだった。

 1年半の闘病の末、父・美代志さんが腎臓がんで亡くなったのは09年6月25日。12歳でゴルフを始めた時からの師匠でもあり、何でも話せる肉親の存在は大きかった。父の話題になると、公の場でもたびたび号泣した。現実を受け入れられるようになった昨秋、新たな出会いが転機となった。

 高山忠洋ら男子プロを教えている青山充コーチ(39)に押しかける形で指導を仰ぐことになった。「体に無理をしていた」というスイングは「今は自然に振れるようになった」と効果を口にする。フェアウエーを外さず、ピンに絡む好調なショットが5連続バーディーの原動力となった。助言は練習の仕方からゴルフマネジメントまで多岐に及ぶ。「これまでは練習の仕方も分からなかったし、マネジメントも分かっていなかった」と振り返る上原は「ゴルフはこうするんだと、ようやく分かってきた。ゴルフが楽しい」と充実の表情を浮かべた。父の死後、ぽっかりと開いた穴を埋めるように、あらゆることを吸収していった。

 先月下旬の三回忌では墓前で「日本女子オープン優勝」を誓った。「メジャーは誰もが獲りたいタイトル。今はそのための下積みの練習です」。壮大な夢の前につかんだ優勝。これからも、天国の父と目の前にいるコーチとともに歩んでいく。

 ★生まれ&サイズ 1983年(昭58)12月22日、沖縄県那覇市出身の27歳。1メートル60、52キロ。血液型O。長姉はトライアスロン選手の千葉ちはるさん(39)。

 ★サッカー少女 小学4~6年に那覇市の宇栄原FCでサッカーをしていた。ポジションはFW。同クラブには元日本代表FW我那覇和樹(FC琉球)も在籍。OB会ではエールを送られたこともある。

 ★彩子姉さん 12歳からゴルフを始め、98年に日本ジュニア、02年に日本女子アマで優勝。04年のプロテストにトップ合格し、同期には横峯さくららがいる。沖縄出身の女子プロの姉貴分的存在で、宮里藍からは「彩子姉さん」と慕われる。

 ★社会貢献 エコ意識が高く、ツアーにはマイはしを持参。回収したペットボトルのキャップをリサイクル業者に買い取ってもらい、その金額を発展途上国の子供のためのワクチンに充てる活動や、乳がん撲滅のためのピンクリボン活動など、社会貢献をライフワークにしている。

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