綿密な計算 なぜウッズにあの質問はぶつけられなかったのか?

[ 2010年4月6日 10:13 ]

マスターズ・トーナメント出場を前に、記者会見するタイガー・ウッズ

 不倫スキャンダルによる出場自粛から復帰する男子ゴルフのスーパースター、タイガー・ウッズ(34)=米国=が5日、マスターズ・トーナメントの会場オーガスタ・ナショナルGCで、騒動後初めての記者会見に臨んだ。その裏に周到な計算や、スターの復活を心待ちにするゴルフ界の思惑も見え隠れした。

 35分間の記者会見で、質問はゴルフにほぼ集中。ウッズにとって理想的な展開で進んだ。冒頭で家族やツアー関係者にあらためて謝罪。スキャンダル発覚の発端となった自動車事故や「セックス依存症」とも報道されたリハビリ治療への質問には「プライベートなこと」と従来通りの答えを繰り返した。
 この問題でこれまでほかの選手たちが質問攻めにされたことにも触れ「この会見後、ほかの選手たちがマスターズに集中できることを望む」と騒動の収拾を訴えた。
 復帰に向け、ブッシュ前大統領の報道官を務めた敏腕コンサルタントのアリ・フライシャー氏を一時的に起用するなど、メディア戦略に万全を期した。再起の舞台に選んだのは、厳しい報道規制で知られ、ゴシップを扱うメディアを排除できるマスターズ。全米で絶大な人気を誇る大学バスケットボール(NCAA)の決勝が行われ、米大リーグは本格的開幕のこの日に会見をぶつけた。すべてが綿密な計算のもとにして行われた印象だ。
 地に落ちたイメージ回復にも躍起だ。これまではミスショットにいら立ち、クラブを放り投げることもあったが「もっとゴルフというゲームに敬意を払ってプレーしたい」と改心を強調。プレーでも「ロールモデル(模範になる人)」となることをアピールした。
 ゴルフ界は完全復活を熱望する。スーパースター不在で今季の米ツアーは人気が低迷、テレビ視聴率は低下し、ギャラリーも減少した。大会のスポンサー企業にとってその存在は不可欠で、潤沢な資金で知られるマスターズも、近年はウッズとともに発展を続けた。プロ転向前の1995年に210万ドル(約2億円)だった賞金総額が、昨年は750万ドルにまではね上がった。
 ゴルフ用品業界の思いも同じだ。AP通信によると、世界的な経済不況で2009年のゴルフ用品販売額は前年比11・6%減の24億ドル(約2256億円)に落ち込んだ。ウッズが活躍してくれれば、落ち込みを食い止められるとの期待がある。
 会見に先駆けて行われた練習ラウンドで、ギャラリーから温かく迎えられた。自身も「ファンが拍手をしてくれるか」と心配を口にしていたが、ホールを重ねるごとに声援は大きくなった。
 「人格者」としてのイメージは崩壊したが、ダイナミックで文句なしに面白いという、選手としての魅力は失われていない。「このような事態を招いたのはすべて僕の責任。それは試合で勝って返すしかない」と話した。5日のラウンドは顔見せ的なプレーに終始したため、仕上がりぶりは未知数だ。4度の栄冠に輝いたオーガスタで、華麗に復活できるか。(共同)

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2010年4月6日のニュース