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浦和、J史上初の無敗V!低迷期&世紀の大失速を糧に復活

[ 2015年6月21日 05:30 ]

<神戸・浦和>敵地に詰めかけた大勢のサポーターと共に、第1ステージ優勝を万歳で喜ぶ浦和イレブン

J1第1S第16節 浦和1―1神戸

(6月20日 ノエスタ)
 赤い悪魔が復活の無敗Vだ!首位を独走する浦和は20日、敵地の神戸戦で1―1と引き分け、11年ぶりに復活した2ステージ制で第1ステージ(S)優勝を決めた。前半27分、MF梅崎司(28)が執念の先制ゴールを決め、08年以降5連敗中だった鬼門で貴重な勝ち点1を獲得。最大5チームで年間優勝を争うチャンピオンシップ出場を最初に決めた。J1新記録となる開幕からの連続無敗記録を16試合に更新。無敗でのステージ優勝は史上初の快挙となった。

 腕に伝わる重量感が心地良かった。浦和が8年の空白を経てJ1の頂点に立った。試合で着用していた白のセカンドユニホームから赤の“正装”に着替えて臨んだ万感の優勝セレモニー。主将の阿部はペトロヴィッチ監督と手を取り合い、金色のトロフィーを天に突き上げた。イレブンが一斉にペットボトルの水をかけ合い、喜びを爆発させる。史上初の無敗V。敵地を赤く染めた約7500人のサポーターが「We are REDS」。大合唱を繰り返した。

 前半27分、魂の先制弾が決まった。梅崎が左クロスに体を投げ出し右足で流し込む。試合後、声が震えた。「このためにレッズに来た。長かったけど未来を見てやってきた」。浦和は06年にJ1、07年にACL制覇。08年加入の梅崎には当然、野心があった。だが09年に腰を、10年に右膝を手術。その頃、さらなる進化を目指したチームは圧倒的な個を生かすスタイルから組織的なサッカーに舵(かじ)を切るが、栄光を否定するような急激な変革はうまく進まなかった。

 梅崎にとって浦和での歴史は残酷だった。タイトルは無縁。サポーターも離れ、10年度に営業赤字を計上し、11年には残留争いも経験した。クラブハウスに抗議電話が鳴り、練習場のエンブレムには生卵が投げつけられた。昨年3月には一部サポーターが差別的な横断幕を掲げ、無観客試合処分を科された。リーグ戦でも残り7試合で2位・G大阪に勝ち点7差をつけながら1勝3分け3敗の失速で優勝を逃した。だからこそ、この時を誰より待ち望んでいた。

 今季もどん底からの出発だった。序盤のACLでは昨季の失速を引きずるようにブリスベン戦では開幕3連敗。試合後、主将の阿部は、怒号の渦巻くサポーター席に向かった。「次は勝つ。だからついて来てほしい」。涙ながらに訴えた。韓国のクラブからは「浦和は球際に弱い」と笑われた。それでも「図星過ぎて…」と槙野。目が覚めた。快進撃が始まったのはそこからだ。

 後半30分、宇賀神が2度目の警告を受けて退場した。それでも勝ち越しは許さなかった。昨オフ、6人の即戦力を補強した。那須は言う。「どんな相手と試合するより練習の方がきつい」と。紅白戦ではレギュラークラス同士による激しいバトルが続く。明らかに昨季までとは異なる光景。だから数的不利でも気迫がなえることはない。

 第1Sを制し、日本一激しい紅白戦を重ねてきた日々は報われた。もう生卵を投げつけられる心配もない。だが、あえてペトロヴィッチ監督の胴上げはお預けにした。森脇は「年間を獲った後にするため、監督には痩せるように言っときます」と笑う。昨季のV逸も過去に葬った。年間制覇の夢が完結するまで、無敗の赤い悪魔が歩を緩めることはない。

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2015年6月21日のニュース