×

村井チェアマン 経営陣が持っていた「生まれ変わる」という覚悟

[ 2014年12月14日 13:45 ]

日本のサッカーや地域の発展について熱く語った村井チェアマン

 【村井チェアマンに聞く(1)】G大阪が終盤で浦和を逆転優勝して今季のJ1は終了。Jリーグの村井満チェアマンに1年間を振り返ってもらった。

 ――就任1年目のシーズンは、J2から昇格したG大阪の逆転優勝で終わった。

 W杯期間中の中断前は16位だったG大阪が、ガラリと変わって優勝したのは素晴らしい。中断期間をうまくいかした。昨年、1993年のJリーグ発足初年度から在籍するG大阪がJ2に降格したときはたいへんな驚きだったが、見事1年で堂々たるJ1復帰を果たした。今季のG大阪の戦いは、決して簡単な道のりではなかったはず。これまで経験したことのないJ2という新たな環境での戦いを通じて、これまで以上の逞しさを身につけたに違いない。

 Jリーグとしては、開幕直後の浦和サポーターの差別的な問題があった。無観客試合は浦和の経済的な損失だけでなく、クラブのブランドイメージにも影響し、サポーターも辛い思いをしたと思う。でもその後、選手も奮起したし、クラブ経営陣も「生まれ変わるんだ」と、覚悟を持っていた。サポーターも制約がある中でサポートを続け、全員で苦しい思いをはねのけた。

 私は1月31日の就任会見で日本のサッカーが世界に誇れるものとして、3つのフェアプレーを挙げた。ピッチ上だけでなく、暴力排除やファイナンシャルフェアプレーなども標榜し、就任直後の実行委でも議論した。ここが一番守らなきゃいけないものという覚悟はあった。浦和のスピーディーな対応は立派。事件が起きた鳥栖戦は3月8日で、私が知ったのは9日、浦和の淵田社長には「時間をかけたくないので今週末までに報告書を出してください」と伝えた。14日の金曜日が期限だったが、浦和は13日に報告してきた。私が提示した日より1日早く、浦和の覚悟と改革に向かう意志が感じられた。淵田さんも就任直後だったが、「ここは日本のサッカー界にとって大事なポイント」と話し、理解してくれた。

 あとは、国内51クラブをすべて回り、いいところも課題も見た。クラブライセンスは3年目で初めて債務超過や3年連続赤字が回避できた。あっというまに過ぎた感じだ。 

 ――6月にW杯ブラジル大会を視察したが、何か感じたことは。

 私の意識が変わった。入場者数が頭打ちになり、ビッグネームの招へいやスタジアム建設など、いろいろ考えたが、「3つの約束」として、お客さんに飽きさせないようにスピーディーなサッカーを掲げた。私自身はJリーグがタフで激しく強いリーグかどうか、再点検した。スピーディーなサッカーは世界の潮流だし、のろのろやっていたらどんどんスキをつかれて失点する。W杯で目の当たりにしたことで、スピードを可視化するために来季からデータを取ることを決めた。

 ――今後は育成もより重視していくそうだが。

 日本代表を輩出できるように、資金を投じて新しいプログラムをスタートさせる。期待される日本人像をサッカー界でつくっていくことは重要だ。これは短期間に招集してできるものではない。ジュニアユース、ユースと人間形成まで一貫してやり、サッカーだけでなく強い人をつくることができるのはJリーグだと思う。

 育成に力入れているかどうかは今まで感覚でしか計れなかった。「あのコーチはすごい」と言われる人がいなくなったらどうなるのか。人に依存した育成システムでは、未来は約束されない。ブンデスリーガやプレミアリーグが導入している育成の評価はよくできている。個人の主観に依存せず、固有の育成方針や哲学、システムを持っているか。育成もボールを止める、蹴るだけでなく、学業やメンタルのコーチがいるか、教育に力を入れているかも調べる。施設やスカウトの目利き能力、財務基盤がしっかりしていて育成が長期的に保証されているか、トップチームに上げた選手にどれぐらいの予算を懸けているかなどを印象論ではなく数値化して分析している。

 例えば、Jリーグもそういうところで評価していいチームにはJリーグのお金で国際試合に参加してもらい、いい循環ができるようにしたい。10年かけて、ポリシーを持って育成をやっていこうというのが、来季の大きなテーマだ。

続きを表示

2014年12月14日のニュース