【筒井真理子 インタビュー前編】主演映画「波紋」5・26公開「最後の爆発は共感していただける」

[ 2023年5月22日 05:00 ]

笑顔でインタビューに答える筒井真理子(撮影・尾崎 有希)
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 筒井真理子(62)主演の映画「波紋」(監督荻上直子)の公開が26日に迫った。毎日映画コンクールで女優主演賞に輝いた「淵に立つ」(2016年)や「よこがお」(19年)などで存在感を示してきた筒井が作品のキャッチコピー「絶望を笑え」を見事に体現してみせた。スポニチ本紙のインタビューに「我慢して頑張っている方たちに見ていただきたい」と熱く語った。その内容を22、23の両日、前後編でお届けする。

 「波紋」は現代社会の闇や不安、絶望をエンターテインメントに昇華させた1本だ。

 光石研(61)が演じた夫が蒸発し、義父の介護も一苦労。主人公の須藤依子(筒井)は信仰に救いを求めるが、新興宗教にのめりこむ母を敬遠して息子(磯村勇斗)も九州に去る。そのうち義父は亡くなり、1人暮らしの依子のもとに10年以上の姿を消していた夫が突然戻ってくる。しかもがんを患って…。

 夫が手塩にかけていた庭のガーデニングを一掃して枯山水に変え、神にすがりながら穏やかな日々を過ごしていたが、夫の帰還でそれも崩れる。加えて猫をめぐっての近隣住民とのあつれきや自身の更年期障害、さらにパート先のスーパーにはクレーマーも現れて…。この柄本明(74)が秀逸だ。

 次から次へと降りかかる難題。つい重くなりがちな話だが、まるで暗くならないのは監督の演出、肩の力が抜けた俳優陣の達者な演技力の賜だろう。

 宗教団体のメンバーたちと炊き出しをする場面が出てくる。「うちの両親も山梨に美術館を作る運動をしたり、社会貢献を大事にした人です。私の中にも“弱い者を助けなければいけない”といった考えが子供の頃から植えつけられてました」と述懐。その上で「“人の面倒を見なければいけない”みたいな思い。なんかけっこう鎖に縛られているんですよね。心理学が大好きなんで、年齢を重ねてから自分の中に、そういうしがらみがいっぱいあって、それが生きづらくしているんだということが分かったんです。そこは依子と似ているなと思いました。例えば、人をいじめたり、仕返しをしてはいけないという心情も依子にはあったと思うんです。自分でそういうのを解放していくっていうのは大変な道のりだったと思う。そこは(自分と)共通するところなんです」

 そして「世の中、多くの人がいろいろなことを我慢して生きている」と指摘。「主婦の方はもう直(じか)に共感していただけると思う。サラリーマンの方もそうですけど。社長さんでも部下に気を使うっていうし。だから、依子が我慢に我慢を重ねて、最後に爆発するところはいろんな人に共感してもらえるのでは。男性は身につまされる方も多いかもしれませんよ」(続く)

 ◇筒井 真理子(つつい・まりこ)1960年(昭35)10月13日生まれ、山梨県出身の62歳。早大在学中は劇団「第三舞台」の看板女優として活躍。2016年の映画「淵に立つ」は第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞。主な出演映画に北野武監督「アキレスと亀」、白石和彌監督「ひとよ」など。

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