坂東彌十郎 新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」に出演 「表現することは一つ」

[ 2023年2月7日 09:11 ]

新作歌舞伎「ファイナルファンタジー10」に出演する坂東彌十郎
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 【牧 元一の孤人焦点】歌舞伎俳優の坂東彌十郎(66)が3月4日に東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京で開幕する新作歌舞伎「ファイナルファンタジーX」に出演する。インタビューに応じた彌十郎は「もうすぐ67歳だが、また新たな彌十郎を見ていただきたい」と意気込みを語った。

 昨年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演。主人公・北条義時(小栗旬)の父・時政として強い個性を放った。

 「楽しかった。新しい仲間が増えたことが一番大きい。ドラマの出演をきっかけに歌舞伎に少しでも興味を持っていただけた方が増えたのなら、こんなありがたいことはない」

 新作歌舞伎「ファイナルファンタジー10」は尾上菊之助が企画・演出・出演。この作品で彌十郎が演じるジェクトはくしくも「鎌倉殿の13人」と同じように主人公の父親だ。

 「菊之助さんから直接電話で『新しいことをやりたいので出ていただけますか?』とオファーをもらって『必要とされるのならばありがたい。何でもご協力します』とお答えした。『鎌倉殿の13人』の放送が始まる前だったので、菊之助さんは純粋に『ファイナルファンタジー10』の父親像に合っていると思って僕を選んでくれたのだろうが、台本を読んでみると、不器用な父親という点で時政とつながるところもあって、不思議な感じがした」

 「ファイナルファンタジー10」は2001年に発売されたロールプレーイングゲーム。主人公・ティーダやヒロイン・ユウナらの戦いの旅を描き、シリーズの中で人気が高い。

 「『ファイナルファンタジー』のことは知らなかった。僕はやりだしたら夢中になってしまうので、芝居の勉強がおろそかになってしまうと思い、ある時期からゲームに手を出すのをやめていた。『スペースインベーダー』が流行した頃、大変なはまり方をして時間があれば喫茶店に行って、かなりのトップクラスの腕前になった。動体視力には自信があった」

 今回の舞台には菊之助、彌十郎のほか、中村獅童、尾上松也、中村錦之助、中村歌六らが出演。名作ゲームと伝統芸能・歌舞伎の融合で、企画の背景には「相互の文化をつなぐ新しい架け橋にしていきたい」(菊之助)という思いがある。

 「スーパー歌舞伎の立ち上げから演出助手もやらせてもらい、出演もしていたので、新しいものを作ることに全く違和感がない。あくまでも歌舞伎の古典の基礎があって、その延長線上にあるものだと思っている。演技を始めれば古典も新作も関係なく、演じること、表現することは一つだと思う。歌舞伎と言うと敷居が高いと思われがちだが、もっと気軽に観劇してもらえる努力を菊之助さんやほかの方たちと続けている」

 会場は巨大スクリーンの映像や音楽などと融合する回転劇場。巨大な盆に乗った客席自体が回転し、観客は360度全てで展開されるステージを楽しめる。

 「元々、興味を持っていた。僕も演出仕事に携わったことがあるので、劇場のシステムがとても気になる。楽しみだが、役者はステージを走って回らないといけない。自分を過信せず、体力をつけないといけない」

 66歳にして新たな挑戦となるが、その先には目標もある。

 「個人的には、歌舞伎にもっと恩返しをしたい。最終的には、歌舞伎スタイルの劇場をヨーロッパに作ることが目標だ。日本にオペラの劇場はたくさんあるし、ニューヨークやヨーロッパで公演した際には歌舞伎に興味を持っていただけていることを実感した。ヨーロッパに歌舞伎の劇場を作って、何十年も続けていけば、新たな演劇が生まれるかもしれない。僕はそれを『ユーロ歌舞伎』と考えている。いつか絶対に実現したいと思っている」

 壮大な目標への道のりはファイナルファンタジーの世界に近い。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2023年2月7日のニュース