ナナフシギ 初著書「列島怪談」 最恐レベルと芸人ならではの切り口

[ 2022年9月22日 08:00 ]

著書「列島怪談」を発売する「ナナフシギ」の大赤見ノヴと吉田猛々
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 【牧 元一の孤人焦点】お笑いコンビ「ナナフシギ」が24日、初めての著書「列島怪談 あなたの地域の一番怖い話」(宝島社)を発売する。

 怪談を語るYouTubeチャンネルの登録者が11万人を超える人気者の2人。著書には、2人が所持する250本以上の怪談の中から27本を厳選して掲載した。

 編集人の角由紀子さんは出版に至った理由について「お二人の怪談のクオリティーは極めて高い。怪談に偏差値があるとすれば最上位レベル」と説明する。

 そんな中で芸人らしさが出ている1本が、九州・沖縄編の「リゾートホテル」。大赤見ノヴの実体験を基にした話だ。大赤見は宿泊したホテルで、鏡越しに、ベランダの上方から真っ逆さまに落ちてくる女性を目撃する。その女性と目が合い、強い違和感を覚える。それが1回では終わらず、何回も続く。

 各話の末尾に2人の解説があるが、この「リゾートホテル」では吉田猛々が何度も飛び降りる女性について「実はもう突っ込まれ待ちで『何回やってるの?』と言ってくれる人がいれば成仏するのかもしれない」と指摘している。突っ込み待ちの霊…。怪談ながら、芸人ならではの笑いの切り口がある。

 大赤見は「僕の実体験だからこそ、できる表現だと思う。あの時、実際に『怖っ~!』と感じた半面、『何回飛ぶん?』と感じた。いびつな間がある幽霊を目の当たりにすると『出方がへたくそやな。先輩に教えてもらってから来い』と思う」と話す。

 吉田は「根が芸人なので、怪談を話している途中で自然と蛇足が生まれる。怪談に笑いはいらないという人もいるだろうが、僕らの怪談はこれだと思う。ほかの人たちにはできないだろうという自負もある」と語る。

 2人は2018年にコンビを結成。それまではそれぞれ別のコンビで活動していたが、怪談によって結びついた。大赤見は「呪われた一族の末裔」とされ、数々の霊体験の持ち主。一方、吉田は小学生の頃から約1000冊のオカルト本を読んで来たというマニアで、昨年はトークイベント「怪談最恐戦」で準優勝した。

 大赤見は「僕は小学生の頃から、女の子を集めて、自分の体験やおやじに聞いた話を語っていた。小3、小4のホームルームでの『ノヴの怪談の時間』が原点で、今でもその時と同じように、みんなに怖がってもらいたい、喜んでもらいたいと思っている」とエンターテインメント性を強調する。

 吉田は「怪談には学びがある。例えば、妊婦は赤ちゃんを持っていかれるから葬式に出てはいけないとか、さまざまな風習を知ることもできる。僕は怪談から雑学や文章の組み立て方を学んだ」と教養性を指摘する。

 現在、オカルト関連のコンテンツは世にあふれているが、2人の活躍は顕著。今後について大赤見が「僕の名字にまつわる話を1冊にまとめて、映画化を狙いたい」と語ると、吉田は「僕は彼が映画化するまでをドキュメンタリーで撮って、映画を2本にしたい」と続けた。

 怪談界屈指の才人の2人から目が離せない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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