「鎌倉殿の13人」腰越状 まさかの“新解釈”三谷マジック再び「恐るべし」ネット感嘆 宗盛の善意か策か

[ 2022年5月15日 06:00 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第18話。源義経(菅田将暉)に文の代筆を申し出る平宗盛(小泉孝太郎・右)(C)NHK
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 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は8日、第18話が放送され、兄・頼朝の不興を解くため源義経が書いたとされる詫び状「腰越状」が登場した。“新解釈”によるストーリー展開に、SNS上には驚きや感嘆の声が続出。脚本・三谷幸喜氏(60)のマジックがまたも炸裂した。

 <※以下、ネタバレ有>

 大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 第18話は「壇ノ浦で舞った男」。天才軍略家・源義経(菅田将暉)は禁じ手の「漕ぎ手撃ち」、舟から舟へ飛び移る「八艘飛び」も駆使し「壇ノ浦の戦い」(1185年、元暦2年)に勝利。平家は滅亡したが、平宗盛(小泉孝太郎)の母・二位尼(大谷恭子)は宝剣とともに、安徳天皇(相澤智咲)は女官に抱かれて入水した。

 一足先に鎌倉に帰った梶原景時(中村獅童)は「九郎殿は、戦にかけては神がかった強さを持っておられます。しかしながら、才走るあまり、人の情というものを蔑ろにされます。勝利のためには(手を選ばぬ)」と報告。頼朝は「すぐに呼び戻せ」と命じたが、義経は京の治安を守る「検非違使」に任命されたため、都を離れられない。

 そこへ丹後局(鈴木京香)の提案により、義経は罪人・宗盛を鎌倉に連れていく役目を担う。ただし、宗盛の斬首は京に戻った後。義経が検非違使も辞めないため、大江広元(栗原英雄)は「これは大掛かりな猿芝居ですな」、景時は「すべて法皇様と九郎殿が示し合わせたこと。よほど九郎殿を気に入られているご様子。これでは、勘違いされても不思議はごさいませぬ。鎌倉殿の後を継ぐのは、自分だと思われたとしても。九郎殿を鎌倉に入れてはなりませぬ。何を企んでおるか分かりませぬ」。頼朝は「決めた。九郎には会わん。会うのは宗盛のみとする。九郎は腰越で留め置け」と義時や安達盛長(野添義弘)の忠告に耳を貸さない。

 鎌倉の西にある腰越。鎌倉入りを許されない義経に、宗盛は「文を書いてみてはいかがだろうか。九郎殿の兄上殿に対する思いを、文にして届ければ、きっと兄上殿の心も動かれよう。書いて進ぜようか」と申し出。文は頼朝に渡ったものの「何だこれは、九郎が書いたものではない」と立腹し、広元も「検非違使になられたことについて、当家の名誉であり、世にも稀な重職で、これ以上のものはないと書いてあります。されど、鎌倉殿も右兵衛権佐であらせられた」も同調。頼朝は「わしの官職を、ろくに知らぬ者が書いたことは明白だ。なぜ、そのような小細工をする。宗盛を連れて、とっとと京に帰れと伝えよ」と弟を突き放した。

 義時が仲裁に入ったが、義経は「無用だ。兄上が帰れと言うのなら、それに従うまでのこと。私は決めた。この先、法皇様第一にお仕えする。京の都で、源氏の名に恥じぬように生きる。私は検非違使の尉、源九郎判官義経だ」と兄との別れを決心した。

 番組公式ツイッターによると、史書「吾妻鏡」には「元暦2年(1185)5月24日条 源頼朝から鎌倉に入ることを許されず、腰越駅(現在の神奈川県鎌倉市腰越付近)でいたずらに日を送っていた義経は、大江広元を通じて頼朝に1通の詫び状を送りました」。「腰越状」と呼ばれる書状。「鎌倉殿の13人 大河ドラマ館」の公式ツイッターは「腰越の満福寺は義経ゆかりの寺として知られ、弁慶筆とされる『腰越状』の写しが伝わります」と紹介した。

 腰越状は真偽が疑問視されているが、今作は「宗盛代筆」が「頼朝&義経決裂」の要因に。SNS上には、三谷氏の作劇を褒めちぎる声、さらには宗盛の代筆が“善意”だったのか、源氏に報いる“一矢”だったのかの考察も相次いだ。

 「まさか腰越状を平宗盛の代筆という設定にして、その内容の不審さから源氏兄弟の仲違いにつながるように描くなんて…三谷さん、よくこんなこと考えつくなぁ」

 「偽書の疑いがある腰越状の件を、宗盛の代筆としたことで頼朝の疑心を煽り、義経を孤立に追い込む。兄上に褒められたい、兄上の喜ぶ顔が見たかっただけなのに、すべてが悪手になっていく過程を残酷に描く三谷氏の容赦のなさ、恐るべし」

 「腰越状は偽書だという近年の史学の見解を逆手に取って、腰越状は本物。ただし、義経の依頼で平宗盛が書いたもの。すげーシナリオ、これぞ超展開だな」

 「(検非違使の)無断任官はさほど問題になっておらず、腰越状の代筆を申し出るお人好しの宗盛と、それに乗る、詰めの甘い義経が織り成すコラボ悲劇という斬新な展開」

 「宗盛が代筆→かつての一言お手紙と違いすぎてバレる→宗盛が(おそらく)親切心で書いた箇所が兄弟にトドメを刺す。腰越状の偽物説の膨らませた方が凄いね。上総介の下手な字で書いた願文が、義経の美しい代筆に効いている」

 「宗盛さん、腰越状で頼朝・義経兄弟の仲にクサビを打ち込んだわ。彼が官位とかに疎いわけないじゃん。絶対、ワザとだな。一矢報いたのね…やるじゃん」

 「義仲討伐時の雑かつ素直な文書を見れば、本作の九郎に腰越状なんて後世に残る名文を書けるわけがない。凄い説得力」

 「それぞれの個性あふれる直筆の対義仲戦の報告書。あの時、誰よりも頼朝を喜ばせた簡潔かつ豪快な義経の文。その上で、腰越状をよりによって宗盛の代筆にする。ホント鬼だな!」

 「腰越状をイラスト入りで書いていたら、きっとうまくいったと思うの」

 「何だよ、この脚本。サイコな菅田義経に感情移入してしまうではないか…腰越状の矛盾点が宗盛の代筆だからという新解釈。上総介広常の誅殺といい、大河が正史より歴史に忠実で合点がいくように感じるから、三谷幸喜恐るべし」

 今作は義に厚い木曽義仲(青木崇高)、対立しながらも認め合う義経と景時の関係などにも「新鮮」の声が多い。歴史ファンも唸る三谷脚本。生存説のある義経、謎に包まれた頼朝の最期は、どのように描かれるのか。

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2022年5月15日のニュース