「ちむどんどん」仲間由紀恵の柔軟演技 制作側も「お母ちゃん、ありがとう」

[ 2022年5月11日 08:15 ]

連続テレビ小説「ちむどんどん」第23回で、賢吉(石丸謙二郎)と話す優子(仲間由紀恵)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】11日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第23回で、女優の仲間由紀恵(42)が演じる優子が、女優の黒島結菜(25)が演じる娘の暢子に「あんたがあきらめても、うちはあきらめないよ」と強い思いを示す場面があった。

 演出の松園武大氏は「元々、脚本の羽原大介さんが、この物語の中に盛りこみたいと考えていたことの一つだ。それは、ヒロインが自分の夢をあきらめかけた時、ほかの誰かがヒロイン以上の強い思いでヒロインを引っ張っていくこと。その思いが第23回の台本に込められていた」と話す。

 この場面が際立つのは、優子がそれまでずっと、どちらかと言えば受動的な姿勢を見せてきたからだ。長男の賢秀(竜星涼)が巻き込まれた詐欺の投資話にも、賢秀から懇願されると、自分の考えを示すことなく出資。長女の良子(川口春奈)と暢子の姉妹げんかの際にも、困惑の表情を浮かべるばかりだった。

 そんな彼女が親戚の賢吉(石丸謙二郎)に暢子の上京を頼み込む場面で一変。演じた仲間の鬼気迫る表情や熱い口調が鮮烈な印象を残した。

 松園氏は「あのシーンはとても長く、台本にすると10ページ以上ある。その中で優子が『あんたがあきらめても、うちはあきらめないよ』と言うところは、大きくギアが入るところ、シーンの中でかなり重要なターニングポイントになっている。あのセリフをどのくらいのトーン、どのくらいの強さで言うべきなのか、リハーサルなどで仲間さんと話し合いつつ、いちばん良いものを探っていった」と説明する。

 仲間はこれまでも川口、黒島らと名場面を作り上げてきた。良子の涙の告白に笑顔を返すシーン(4月28日放送の第14回)や、葛藤する暢子をほほ笑みながら受け止めるシーン(同29日放送の第15回)などだ。

 松園氏は「仲間さんはとても柔軟で視野が広い役者さんだと思う。自分の芝居がヒロインの黒島さんや家族を演じている役者さんたちにどのような影響を及ぼすかというところまで考えて演じてくださっている。われわれ演出が考えていること、やりたいことをくみ取った上で、うまく立ち回ってくださっている感じがする。こちらから何も伝えなくても『この場面はもっと和気あいあいとしたいのか!?ならば自分はこうすれば、みんなが表現しやすくなるんじゃないか』という感じ。優子さんと同じように、いつもみんなを温かくおおらかに見守ってくださっている。私たちとしても『お母ちゃん、ありがとう』とお礼を言いたい」と話した。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2022年5月11日のニュース