木幡竜 主演映画「生きててよかった」で迫真格闘シーン 「命懸けでやることが敬意」

[ 2022年5月10日 08:20 ]

映画「生きててよかった」で、地下格闘技で戦う主人公を演じた木幡竜
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】13日公開の映画「生きててよかった」に主演した俳優の木幡竜(45)が迫真の格闘シーンに懸けた思いを明かした。

 「自分のことを『日本一無名の主演俳優』だと思っているので、命懸けでやることが、この映画への敬意だと思った」

 木幡はプロボクサーとして活躍した後、2003年に俳優デビュー。中国に渡り、10年公開の映画「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」などに出演し、頭角を現した。

 今作は、ドクターストップで引退した元プロボクサーが地下格闘技に挑む物語。ルールが整備され、技術が高度化した現在の総合格闘技では見られないような殺伐とした戦いを繰り広げる。

 対戦相手役を演じたのはスタントマン。実際の試合ではないため、本来ならば互いに手加減するところだが、木幡はリアリティーを求めた。

 「僕の方から『蹴るところはしっかり蹴って、締めるところはしっかり締めてほしい』とお願いした。信頼関係ができていたので、やってもらったが、僕よりスタントマンの方が怖かったと思う。チョークスリーパーを受けるシーンで1回落ちたが、筋肉の動きや血管の浮き出方などが、手加減された場合とは全く違う。僕の方はパンチを1発も当てていない。相手のぎりぎりに通している。元々、狙ったところを早い速度で打つ技術があるので、スタントマンがリアクションしてくれれば、当たっていないのに当たったように見える」

 強引にスリーパーから逃れようとする場面があるが、実際は対策を熟知。総合格闘家として著名な宇野薫氏が高校の先輩で、宇野氏に打撃を教えつつ、宇野氏からサブミッションを習った経験があるという。

 この作品のために体重を10キロ減量。映画「燃えよドラゴン」などで知られるブルース・リーのような鋼の肉体を作り上げた。

 「見栄えを良くするための筋肉ではなく、相手を殴って倒すための筋肉をつけた。筋肉を大きくすると、スピードと持久力がなくなって、説得力がなくなる。『レジェンド・オブ・フィスト』に出た時、主演のドニー・イェンと僕がやり合うシーンで、ドニーは僕が裸になるのを嫌がった。あとで関係者に聞いたら、ブルース・リーのファンのドニーは僕の体を見て、自分より僕の方がブルース・リーに似ていると思ったらしい」

 今作の主題を端的に言い表すならば「戦い」だろう。

 「『戦い』と言われ、パッと浮かぶのは自分の顔だ。人と戦えば勝ち負けが出る。運も左右する。人と戦うのはむなしい。しかし、自分との戦いに運は関係ない。100%、努力でなんとかなる。自分の中に目標を置き、そこに向かって戦うのが精神的にいちばんいい。僕はボクシングをやっていた時から今に至るまで、そう思って生きている」

 その思考が映画史に新たに刻まれるであろう格闘シーンに結実している。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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