「ちむどんどん」片桐はいり 演出側「風呂敷で目を回すのはご本人のアイデア」

[ 2022年5月4日 08:30 ]

連続テレビ小説「ちむどんどん」で、比嘉家の中で歌子を探す下地響子(片桐はいり(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】4日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第18回で、女優の片桐はいり(59)が演じる音楽教師・下地響子が、女優の上白石萌歌(22)が演じる生徒・比嘉歌子を探している途中で目を回す場面があった。

 下地は音楽を熱烈に愛する教師。歌子の歌の才能を見抜き、音楽の道に誘おうとしているが、登場するたびに、そのキャラクターの強烈さが目を引く。

 演出の松園武大氏は「歌子は引っ込み思案な女性なので、彼女の物語を動かしていくために、パワフルなキャラクターが必要だった。われわれが当初、そのキャラクターに関して打ち合わせをした時、その人物を女性にするならば片桐はいりさんが面白いという話になった。ご本人に出演依頼する前だったが、そのイメージで脚本が書き始められた」と話す。

 歌子は下地が説得しようとすると、常に逃避。第18回では、下地が比嘉家を訪れたことで逃げ場を失い、大きな風呂敷の中に隠れる。

 松園氏は「下地は米・アニメ『トムとジェリー』のように歌子を追いかけ回すシーンが多い。ところが、追いかけても、逃げる歌子をなかなか見つけられない。なぜ下地は歌子を見つけられないのか…?その理由を、初めて片桐さんとお会いした時に打ち合わせし、アイデアを出し合った。例えば『肩が何かにぶつかったらその方向にしか曲がれない人』『自分が進む方向だけしか見ない人』などがあり、その中に『目が回る人』というのもあった。風呂敷を見て目を回してしまうのもご本人のアイデアで、美術スタッフに、目が回りそうな風呂敷を用意してもらった」と明かす。

 下地は、ふくらんだ風呂敷を見つけると、じわりじわりと歩み寄る。ところが、風呂敷の渦巻き模様を見つめているうちに「目が回る」と倒れてしまう。

 松園氏は「実は、片桐さんがこのドラマで最初に撮ったシーンだった。撮っていて、本当に凄い人だと思った。あのシーンはコメディー的な要素が強いが、片桐さんはそこで、笑わそうとする演技をしない。例えば、家に上がる時にちゃんと靴をそろえてから上がる。畳のへりは絶対に踏まないように歩く。風呂敷に気づいて近づいていく時もひょこっと畳のへりをまたいでいる。人物造形がしっかりしていて、下地の不思議な人という面ときちんとした人という面をうまく組み合わせたお芝居をされている。あのシーンに限らず、いつもご本人は『今のお芝居で大丈夫かしら?』『あれで良かったのかしら?』と心配されていて、その真摯な姿勢に頭が下がる思いがする」と話す。

 下地と歌子は今回も打ち解けることがなかったが、ここからが見どころのようだ。

 松園氏は「ここまでの2人には『歌わせたくて追いかける人と逃げる人』という一方的な関係性しかない。しかし、この先、どこかで、その一方的な関係性が崩れ、2人の物語が動き始める。そして、それがヒロインの暢子にとっても、家族にとっても、重要な役割を担うことになる。これから何が起きるのか、楽しみにしていただきたい」と語った。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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