永瀬拓矢王座、全勝対決で豊島竜王下し5連勝 初の王将戦挑戦権に王手

[ 2020年11月18日 05:30 ]

第70期王将戦挑戦者決定リーグ ( 2020年11月17日 )

先手の永瀬拓矢王座(右)が盤上に手を伸ばす。(左は豊島将之竜王)
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 将棋の第70期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負で渡辺明王将(36)=名人、棋王含め3冠=の対戦相手を決める挑戦者決定リーグは17日、東京都渋谷区の将棋会館で2局を行った。4戦全勝対決となった豊島将之竜王(30)=叡王との2冠=―永瀬拓矢王座(28)戦は永瀬が169手で勝ち、単独首位に。羽生善治九段(50)は木村一基九段(47)を91手で下し、1敗をキープした。

 最終盤は1手ごとにあぐらをかき、腰を落として読みを入れる。正座に直ってもさらに確認作業を追加してから丁寧に一手を指す。「入王形になったが判断が難しい。一つ一つ気をつけながら指していました」。軍曹こと永瀬の131手目▲8六歩=第1図=で自王の上部スペースを確保し、脱出への道筋をつくる。「(最後は)1八に残った飛車が取られると持将棋になる。それだけを気にしていました」。二転三転した中盤から抜け出し、大量リードを奪いながらも憎らしいほど慎重に熟考を重ね、豊島を投了に追い込んだ。

 宿命のかおりがするカードだ。6月21日から3カ月間にわたって繰り広げられた第5期叡王戦7番勝負は、いきなり千日手指し直しで開幕した。さらに第2、3局は連続持将棋(引き分け)と、将棋界に残る壮絶なシリーズとなった。永瀬は本来なら最終局となるはずの第7局を制し、3勝2敗と防衛に王手をかけながら、第8、9局でまさかの連敗。無念の失冠を味わった相手とはこの日の対局前まで6勝6敗と全くの互角。2カ月ぶりの再戦でささやかな復讐(ふくしゅう)を果たした。

 「判断が難しい将棋で、先手(永瀬)の駒が少ないので、長期戦になると厳しいイメージ。じり貧にならないように指していました」

 全勝対決を制して挑戦者争いの単独トップに立った。20日の最終局で広瀬章人八段(33)を下せば文句なしの全勝で勝ち名乗りを受ける。敗れても、豊島―羽生戦の勝者とのプレーオフ出場権は手中にしている。

 隣室の対局で羽生が1敗を守ったため、豊島に敗れていればシード順の差で挑戦権は消えていた。それだけこの日の勝利は天と地ほどの落差があった。「厳しい戦いが続いているが、また頑張りたい」。挑決リーグ初登場で初挑戦へのチケット獲得は、もう目前だ。(我満 晴朗)

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