鈴木亮平「西郷どん」島編が描かれた意義語る、西郷隆盛が広い視野持つきっかけに

[ 2018年6月3日 08:00 ]

「西郷どん」で西郷吉之助を演じる鈴木亮平。吉之助は島で幸福な日々を過ごすが…(C)NHK
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 俳優の鈴木亮平(35)が主演を務めるNHK大河ドラマ「西郷どん」(日曜後8・00)は3日放送の第21話「別れの唄」で“島編”のクライマックスを迎える。南国・奄美大島に潜居した西郷吉之助は絶望の中、島の女性・とぅま(愛加那)と出会い結婚。人間として再生し、吉之助の人生で最も幸福だったといえる日々を過ごした。鹿児島・奄美大島と沖永良部島で長期ロケを行った鈴木がインタビューに応じ、吉之助に多大な影響を与えた島での生活について語った。

◆斉彬亡き後に島流し「絶望と自己嫌悪、死人のような人間」◆

――“恩師”だった薩摩藩主・島津斉彬(渡辺謙)を失い幕府から追われ、冬の錦江湾に月照(尾上菊之助)と身を投げるも生き残ってしまった西郷吉之助。島へ流れたときの吉之助の感情についてどう捉えていますか。

 「絶望と自己嫌悪ですね。自分だけ生き残ってしまったので、武士としてはその気持ちがとんでもなく大きかったのかなと。殿も失くし、自分は何も成し遂げることができなかったので、気持ちは死に向かっています。西郷さん自身も“自分は土の中の死んだ骨だ”と語っていらっしゃいましたが、まさに“死人”のような人間になってしまったと思います」

――演じていて辛いと思ったときは。

 「辛いという気持ちも感じないくらい感情がゼロだったと思います。何も感情がない状態。島に来ても自然の美しさ、人の優しさに気付くこともなく、現地の風習を見下してしまう。これまで演じてきた吉之助とは違う吉之助だったので(台本を読んで)僕自身も驚きました。別のドラマをやっているような感じでした。愛加那さんが作ってくれた料理を手で払いのけてしまう場面があったのですが、今の人たちは絶対にやらない失礼なことなので、それが自然に出来るくらいの感情でした」

◆愛加那と出会い再生「二階堂ふみさんの演技が凄い。感受性の塊」◆

――愛加那との出会いによって、奄美大島の美しさ、自然の素晴らしさに気づき、人として再生していきます。

 「愛加那さんとの出会いの中で、自分がよかれと思ってやってきたこと、民のためにと思ってやってきたことが、島民たちからの搾取の上に成り立っていたという構図に気付かされる場面があります。吉之助は自分自身のためには再生できない人間で、人のためにこの状況を何とかしたいと思ったときに再生していく人だと思うんです。再生のきっかけを与えてくれたのが愛加那さんで、このドラマの中では大きなポイントですね」

――愛加那を魅力的に演じている二階堂ふみさんの印象を教えてください。

 「演技が凄い、凄いと聞いていましたが本当に凄いです。感受性の塊。ただ、そのセンスだけで演じるのではなく、冷静に客観的に見て、いろいろなアイデアを出しながらストイックに芝居に向かう姿勢が凄い。年下ですが、引っ張っていっていただいている感覚がありますし、その方が島の物語は正解だなと思いました。二階堂さんの感性に染まっていくことが、吉之助が島の生活に染まっていくことになるのではないかと。リンクしているような気がします」

――愛加那の台詞(せりふ)に“薩摩の民の中に、島の民は入っていない”という言葉がありました。

 「あの台詞は衝撃的でした。吉之助は薩摩と島で搾取の構図があると知らなかった。島の民は薩摩藩に砂糖を献上していた。無知だった自分のことを責めるし、今までの行いを責める。このときの吉之助にとっては、このようなことがあってはならないという気持ちが芽生えたと思います。この経験が、吉之助が今後広い視点を持つきっかけになるんじゃないかと。目の前のことだけを見るのではなくて、間接的に影響を与えているのかと注意深く大きな視点で見るようになったと思います」

◆家族残して薩摩へ戻る葛藤「複雑な気持ちを美化することなく演じたい」◆

――吉之助が島での生活で受けた影響は大きかったのですね。

 「当時の薩摩と奄美大島は異文化ですし、西郷さんは、自分たちがいる世界から離れて自分たちの世界を冷静に見た時に、おそらく当時の幕末の志士たちが持っていなかった目線を持ったのだと思います。悪いところも良いところも見えたはず。僕も留学をしたときに、今まで見えていなかった自分の国のことがたくさん見えてきた経験があるので、そこが西郷さんの広い視野、どっしりした存在感に繋がっていくのではと思います。2つの島での生活は、僕らが想像する西郷隆盛になっていくための時期なのではないかと。ぶれない、頼もしい大人の西郷像になったのが、島での幸せな生活と過酷な経験だったと思います」

――島では幸せな生活を送っていましたが、第21話では吉之助に召還命令が。薩摩、そして幕末の中心地へ帰っていくことを選択する西郷をどう演じようと思いましたか。

 「複雑な心境だったと思います。愛加那さんから見たらとても悲しいこと。僕も視聴者の皆さんから見て“いい人”でいたいのですが、妻子をおいて島を出ていく葛藤や、客観的に見ると酷いと思われる部分、人間の複雑な気持ちを美化することなく演じていきたいなと。当時の男性は現代の男性よりも自分の使命、武士としての使命があり、成し遂げるんだという思いが強かったと思いますが、それでも人間ですから、今の人々と変わらず妻や子供に対する愛情があったと思います。そういう葛藤などを生々しく出せたらなと思います」

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2018年6月3日のニュース