「世界遺産」が日本初撮影“道具を使うサル” 5日間の検疫…過酷ロケの裏側

[ 2018年3月24日 09:20 ]

道具を使って木の実を割るチンパンジー(C)TBS
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 1996年4月から放送されているTBSの長寿ドキュメンタリー番組「世界遺産」(日曜後6・00)。同番組は世界遺産の魅力を、迫力のある現地映像とナレーションのみで伝える独特な手法で高い評価を得ている。25日には日本初撮影に成功したコートジボワール「タイ国立公園」の道具を使うサルの映像を放送する。番組の見どころを堤慶太プロデューサーに、現地取材の裏話を現地ディレクターにそれぞれ聞いた。

 ◆道具を使うチンパンジーを日本初撮影 撮影許可に「相当な手間」

 2月18日放送「メイマンドの文化的景観」に続き、2カ月連続で日本初撮影の映像を放送する「世界遺産」。今回、研究者以外の立ち入りが一切禁止されている“道具を使う”チンパンジーの生息地へ取材に入ることが特別に許可されたクルーは、お気に入りの石を使って木の実を割るチンパンジーの撮影に成功した。

 人間とDNAが1・2%しか違わないチンパンジー。人間の病気に感染してしまうため、生息地に入るためには5日間の検疫が義務付けられる。その間に、病気に感染していないことが確認されないと、近づくことが許されないのだという。堤Pは「撮影許可をもらうまでに、相当に手間がかかった世界遺産です。チンパンジーと人間がいかに近い存在なのか、よくわかる映像がたくさん出てきます」と見どころを明かした。

 ◆世界遺産の普及に貢献しユネスコから感謝状 国際会議では史上初のテレビ映像放映も

 同番組は1996年の放送開始当時からユネスコとパートナーシップを結び、世界遺産を決める国際会議にもオブザーバーとして参加してきた。2003年にグッドデザイン賞を受賞し、06年には世界遺産普及への貢献を評価され、ユネスコから感謝状が送られた。

 さらに番組20周年となる15年には、ドイツで行われた国際会議「世界遺産委員会」で、番組の特別編「世界遺産この20年の変化」が放映された。この国際会議でテレビ番組映像が放映されるのは史上初めてで、堤Pは「20年間で変わってしまった世界遺産をまとめました。氷河が溶けて小さくなってしまったキリマンジャロの山頂や、内戦で破壊された世界遺産の映像です。映像が終わったあとに参加者から拍手がありました」とはにかみながら振り返った。

 ◆現地Dが明かすロケの裏側 熱帯雨林は「地獄」

 同番組の現地取材に10年以上携わる石渡哲也ディレクターは、過酷なロケの裏側を語る。「暑い地域に行くとしても、洞窟とかに入ると気温差があります。砂漠も昼間50度でも夜には氷点下になるので、薄着だけだと危険」とダウンジャケットは欠かせない。現地の飛行機会社が倒産、テント生活、排水溝がないシャワー、コーディネーターがいないなど苦労話は絶えないが、「一番嫌なのは熱帯雨林です」と言い切る。「スコールでは、痛いほどの雨が落ちてきます。次に雨がやむと湿気がむわーっと。するとアリに噛まれてしまって…。もう地獄のような時間が続きます」と苦笑いでロケを思い返していた。

 25日に放送される道具を使うチンパンジーの映像も現地スタッフが筆舌に尽くしがたい苦労を重ねて撮影に成功した。今回の撮影を担当した江夏治樹ディレクターは「9日間チンパンジーを追跡することで、“道具を使う”以外にも、チンパンジーの奇妙な行動を撮影することができました」とロケを回顧。「木の根っこを叩いて太鼓のような音を奏でる様子に、オス同士の壮絶な喧嘩、腐ったヤシの繊維からミネラルを補給する貴重な場面まで。彼らの生態を克明に記録した映像も必見です」と見どころを紹介した。

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