久保王将を惑わす豊島八段の妙手 28手目4五銀…開局初日から終盤戦突入

[ 2018年1月8日 05:30 ]

第67期王初戦第1局第1日 ( 2018年1月7日    静岡県掛川市・掛川城二の丸茶室 )

封じ手を正立会人の郷田九段(右)に渡す豊島八段(左から)。右から2人目は久保王将
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 久保利明王将(42)に豊島将之八段(27)が挑戦する7年ぶりのカードが開幕した。この日は振り駒で先手となった久保が豊島の工夫の一手に慎重な対応を強いられる展開。豊島が56手目を封じて1日目が終了した。王将はタイトル防衛をかけた、8日の2日目に反撃を期す。対局再開は午前9時。

 対局場に隣接する掛川西高のグラウンドでは練習中の名門野球部が元気に声を発している。時に響き渡る打撃音に負けじと二の丸茶室には乾いた駒音が鳴り及ぶ。1日目の午後としては予想だにしなかった激しい進行。はつらつと手を放つ挑戦者に対し、じっくりと対応する久保の表情がやや硬い。

 「戦型的に選択肢が多く、定跡ではない将棋になる。途中で岐路が多く、長考してしまいました」。保持している8時間のうち、初日ですでに4時間29分を消費せざるを得なかった。その遠因は豊島の放った28手目[後]4五銀(第1図)。先月8日のA級順位戦と同様な滑り出しとなった展開を受けての工夫手だ。両目を閉じて熟考を重ねること42分。[先]同銀と応じたが、その後も苦心の手当てを強いられている。悩ましい一夜を過ごすことになりそうだ。

 一方で豊島。「自王もかなり危険なので、ミスが許されない将棋だと思っています」と自重気味の感想を漏らしたものの、棋譜からは十分な準備の形跡が見え隠れする。封じ手のために投入した1時間21分を含めても消費時間は2時間57分。久保との1時間半に及ぶギャップが物語るものは…。

 とはいってもタイトルホルダーがこのまま黙っていることは決してない。「明日(8日)は朝から激しくなる。気を抜かずにやっていきたい」と前を向いた。もちろん豊島の思いも同じ。「一手一手を慎重に指していきます」と結んで対局場を後にした。

 見上げればライトアップされた名城の天守閣が両対局者を重厚に見守っている。東海道新幹線N700系の通過音がかすかに聞こえてくる。

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