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【舌先三寸】「白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしづかに 飲むべかりけり」

 明治から大正期の飲んべえ歌人、若山牧水(1885〜1928年)の代表作の1つ。

 牧水は毎日、朝1合、昼2合、夜6合、合わせて1升の酒を飲んだと言われる。全国各地を揮毫(きごう)の旅で周り、酒手を稼いでは飲み暮らし、それがもとで肝臓を壊しわずか43歳で亡くなった。

 牧水は「酒は静かに飲め」と歌に詠んだが、「1人酒はアルコール依存症の要注意サイン」と指摘する専門医もいる。

 日本でアルコール依存症で治療を受けている患者は約5万人。患者全体では推計で100万人を超すと言われる。

 最近でこそ控えめにしているが、私は週に何回かは外で飲んでいたい。サラリーマンの身で、財布と相談しながら行けるのは安酒場しかない。

 大手の居酒屋チェーンのように、ただ安ければいいというわけでもなく、大人の「飲み手」(クロウトの「酒飲み」のこと。そんなのあるか?という議論はあとにして)が集まる「落ち着いた雰囲気」の店を選んで行くことになる。

 そういう店はたいがい「1人客」を大切に扱ってくれる。誰かと連れだってたまにやって来て、ドカっとお金を使う客よりも、1人客は毎日のようにやって来て、ほぼ決まった額で飲み・食いをし引き上げる。店にとっては「細く長く」お金がとれる上客なのだ。

 従って店の雰囲気も「1人客がいかに心地よく飲めるか」に重きを置くことになる。

 江東区住吉にある「Y」はそんな店の1つで、「コの字」カウンターには1人客が入れ替わり立ち替わり入ってきて、さっと飲んで帰る。

 何度か入ってきた客を追い返すのを見た。「飲んできましたね。うちは飲んできた方はお断りします」。

 毅然とした態度をとる女将に追い返す理由を聞くと、「うちは1人で静かに飲むお客さんが多いから、酔っ払って入ってきて、お客さんに絡んだりされると困るのよ」とのこと。

 南千住の「O」の名物女将は強烈だ。70歳は過ぎているであろうツンデレ系で、1人飲みの常連客にはやたら優しい。

 ある時、友人たちと店を訪れた折、友人が携帯で店内を撮影したら、女将が血相を変えて飛んできた。「ウチは撮影禁止なのよ。寄越しなさい」と友人は携帯を取り上げられ、写真を強制削除された。

 近くに日雇い労働者の街、山谷地区もある。1人客の中にはワケありの人もいるはずだ。そんな人たちが写真に写り込むと…女将ならではの配慮だと読んだ。

 酒を飲み歩いていると分かる。よい店には店ごとに文化がある。店主が自らの“思い”を込めた大枠をつくり、客と店がそれをゆっくりと熟成させていく。

 静かに1人、酒を飲んでいるとそれが分かる。店にハマれば、飲んでいる時間はぬる湯につかっているようで心地よい。ただし、長居は禁物。健康のためにもね。(専門委員)

 ◆笠原 然朗(かさはら・ぜんろう)1963年、東京都生まれ。身長1メートル78、体重92キロ。趣味は食べ歩きと料理。

[ 2017年12月26日 09:24 ]

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